虹の向こう側

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?虹はどこに隠れている? ラ・ラララ こどものころ、たくさんみたよ なないろのにじを あおぞら、みずたまり、しゃぼんだまのなか なないろのにじ あのむこうがわにいきたいな ぼくらがおとなになったなら あちらへどうかいけますように あらそいもなく なみだをながさないで きみとてをつなげる あのにじのむこうがわへ こどものころ、たくさんみたよ なないろのにじを あおぞら、みずたまり、しゃぼんだまのなか どこにきえたの なないろのにじ でももうみえない でももうみえない おとなになったらみえなくなったんだ あのにじのむこうはどんなばしょなんだろう もしかしたら ここがにじのむこうがわなのだろうか 【虹の向こう側】 ① 昭和から平成になった時、お母ちゃんの股ぐらに収まってテレビの中のメガネのおっさんが、平成、という紙に書かれた文字を掲げていたのを見ていた記憶がある。 ヤッちゃん、平成やって。なんかナウいなあ、とお母ちゃんが言って、僕がそうなん?と言うとお母ちゃんはうちは昭和の女やあ。ヤッちゃんも昭和の男ォ。とケラケラ笑っていた。 多分それが僕の中のお母ちゃんがお母ちゃんやった最後の思い出。 「どうしたんや、ヤッちゃん」 「…お母ちゃん、おらへんねん」 「ええ?キミちゃんおらんのか。鍵は」 「ない。今日ははよ帰るからって鍵はお母ちゃんが持っていきよった」 「ほうか…。ヤッちゃん俺ん所来るか?キミちゃん帰ってきたら迎えにくるように張り紙しといたらええやろ」 「ええの?」 「なんもないけどなあ。その方がええやろ」 ボロボロのアパートに靖男は母親と二人で住んでいた。 母が蒸発した日にもし、母の幼馴染の和夫があらわれなければ、靖男はどうなっていたのだろうか。 靖男は和夫の申し出に頷き、二人で手を繋いで歩いた。 「ヤッちゃん、ほれ見てみいや。でっかい虹、かかっとる。夕焼けの赤い時でも虹はかかるんぞ」 和夫は強面の顔を綻ばせて虹を指さす。 アイパーに清潔な白いシャツと安いがきちんとアイロンをかけた黒いスラックス。精悍な顔立ちの男には、シンプルなものが良く似合う。 和夫はチンピラだと母が言っていたと靖男は思い出した。でも、と思う。 お母ちゃんだってホステスや。ホステスがチンピラを笑える筈なんか、あらへん。靖男は頬を膨らませながら靖男にませた声で言った。 「虹なんか、めずらしないわ」 「そうけ?」 「教室の窓からよう見えるし、ホースで花壇に水やってたら、虹、できるもん」 「ふうん、ほなヤッちゃんはようけ幸せになれる」 「なんでえな」 「虹はな、」 和夫が何事か呟いて、笑った。
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