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 悠斗の帰宅時間は、いつも遅い。  撮影がある日はもちろんのこと、ない日も芸能事務所に立ち寄ることが多いため、家に帰りつくころには、いつも日が暮れている。  改札を抜けた悠斗はランドセルを背負い直し、家へと急いだ。現在夜の八時半。早く家に帰らないと、宿題すらできない。  だれもいない住宅街。街灯の光だけが揺らめいている。静かな路地は、なんとなく不気味だった。悠斗は足を速める。  悠斗は、インテリジェントバンドの私的使用が禁止されていることを知らない。だから悟のバンドがうらやましく思った。それを使えば駅から家までなんて、あっという間なのだろう。  悟はずるい。そう悠斗は感じていた。なんの努力もしていないのに、ものの半年ほどで、みんなから注目される存在となったからだ。
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