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「なに?」
歩みを止めず、こちらにも向かずに巴は答える。
変わったよな、と言いかけて、止めた。確かに巴は変わった。だけど、変わったのは巴だけではない。
悠斗も変わった。そして自分も変わった。こうやって、みんな変わっていくのだ。それが成長というものなのかもしれない。そう思った。
しかし、悟にはそれがなんとなく、腑に落ちなかった。昔のように、雑木林で笑うあの頃のように、何も考えずに楽しくやれればいいのに。
そう考えると、自分のレンジャー活動も、悠斗の芸能活動も、巴の塾通いも、全てが自分たちに絡みつく、うっとうしい蔦のように思えた。
と、その時だった。悟と巴の目前を、赤い何かがゆっくりと横切った。
「風船?」
巴が声を上げる。それとほぼ同時に、三歳くらいの小さな女の子が前から走ってきた。
「私のふうせんがぁー」
女の子は涙声で叫びながら、風船を追う。しかし風船はふわふわと上昇し、街路樹の先に引っかかってしまった。
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