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 悠斗は保育所の頃から、家に帰ると台本を読み、休日には演技やダンスのレッスンを受けていた。  はたから見れば、普通の同級生と変わりなかったかもしれないが、悠斗は親から門限も厳しく決められていたし、家に帰るとすぐに、仕事の稽古に励んでいた。  学校、仕事、学校、仕事、そんな日々を、毎日毎日繰り返してきた。少しでもサボろうものなら、母親にきつく叱られた。それもあって悠斗は、息つく間もなく頑張ってきた。いや、頑張り続けざるを得なかった。  だから、三年前のドラマオーディションに受かった時も、当然だと思った。 自分は、陰ながらたゆまぬ努力を続けてきたのだ。それがやっと報われた、それだけのことだった。  だが、悟はどうだろう。まるで棚から牡丹餅といったように、突然レンジャーに選ばれ、皆の話題を掻っ攫っていく。  いつものヘラヘラした雰囲気で、悠斗などには目もくれず、自分を横切り、抜き去っていく悟。そんな彼の姿が、悠斗には歯がゆかった。 ――タッタッタッタ  悠斗は、モヤモヤした思いを振り切るように、アスファルトを蹴った。辺りには悠斗の足音のみが響いている。
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