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 だけど、不信感があるのと同時に、少し驚いた。今までひた隠しにしてきた『何か』を見透かされた気がしたからだ。 ――俺は、悟と、本当に仲がいいのだろうか。  二人でキャッチボールをしたあの日、結局悟は、先に帰ってしまった。  ボールも拾わず、グローブもそのままで、逃げるように一目散に帰ってしまった。  突然のことだったので悠斗は最初、その場で立ち尽くしていた。しかしはたと気が付いた。悠斗の左手にあるグローブも、転がったままのボールも、悟のものだ。返さなければならない。  悠斗は真面目な性格なので、悟が受け止めず転がっていったボールを探した。草むらの中に入ったボールは、中々見つからない。  転がった直後にボールを追えば、おそらくすぐに見つかっただろうに、少し時間のたった今は、どこにいってしまったのかわからなかった。  十分ほど探したのちに、ボールは木の根のすきまから見つかった。  悟は忙しいだろうから、悠斗はあえて悟の家のチャイムを鳴らさずに、郵便受けの上にグローブとボールを置き、自宅へと帰った。
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