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 いつものこととはいえ、もううんざりだ。悠斗は太ももに肘を乗せ、頬杖をついた。  グゥゥとお腹の虫がなる。こんなことなら、駅前のコンビニで何か買って食べておくんだったな。  そんな時、なぜか悟のことが頭をよぎった。悟は今、何をしているのだろう。家で温かいご飯を食べて、親とたわいもない話をして、ゆっくりと風呂につかっているのだろうか。  もしかすると、すでに布団の中かもしれない。  人は、生まれてくる家庭を選べない。悟の幸運はいつも、悟自身の努力で手入れたわけではなく、「たまたま」「偶然に」そこにあるものだった。  同じ年齢で、同じ保育所で、今は同じクラス。なのに悟は、悠斗の欲しいすべてを持っていた。なんの努力もしていないにも関わらず、「たまたま」「偶然に」持っていた。  なんで悟だけ。  俺の方が、ずっと悟より頑張っているし、性格だっていいし、気を使って生きている。  なのに、なんで。なんで俺だけこんな思いをしているのだろう。  なぜ俺は、自宅のリビングに入ることすら、こんなにためらわなければならないのだろう。  あいつばかり、良い思いをしてる。
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