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「まったく……アレは家庭調査や健康診断の重要書類だぞ?不備があったから再提出と言う形で詳しいプリントも有ったろう?何処にやったんだ!!」
「え、え~と。そのぉ………。」
神崎さんは先生から目をそらして、キョロキョロと余所見している。
いや………余所見というより、目が目茶苦茶泳いでる。
隣の友達も顔面蒼白になってるけど、どうしたんだろう?
てか、僕もう教室帰って良いかな~?
「先生、僕教室に帰って良いですか?……神崎さんもまだ中見てないなら、早く見て家の人に書いて貰いなよ。」
「……………」
この時、僕はまさか即座にゴミ箱にシュートしたなんて思ってなかったから、何気無く言ったけど、続く先生の話で神崎さんが大泣きするとは思わなかった。
「あの中には在学に関するモノが有るから、早く出さんと大問題だぞ?神崎は部活動も有るだろうし、うっかりしていたのは解るが部活どころか必要なもの出さんと下手すると通えなくなるんだぞ?」
神崎さんは中学時代に大会で良い成績を出して、スポーツ推薦で入ってきてたから部活動出来ないと相当困るだろうに………。
「う………ウワァアアアア!!!!アンタが、アンタが渡して来たから!!重要なら重要って言わないから!!!」
「え~と……えぇ?だから、急いで今から出せばい……」
「いちご……封筒すぐに破って途中のゴミ箱に捨てちゃったのよ。」
半狂乱の神崎さんの代わりに友達の女子が、言いにくそうにモゴモゴと言うと神崎はいっそう大声で泣き始めた。
それを聞いて先生も僕も、目を丸くしてポカーンと口を開けて固まった。
それから神崎さんの親が呼び出され、色々と大騒ぎしたらしいが、結局は数ヵ月で転校していったらしい。
本人が学校生活でいたたまれなかったのか、在学できなくなったのかは解らないけど。
「はぁ……封筒渡したらラブレターって勘違いするって何?普通、中身見て確認するでしょ?大体さ、あーんな目立つ場所でそういうの渡さないって、普通は。」
トマトの畑の草抜きしつつ、ぶつぶつとぼやいていると、呑気な顔をした貴斗が汗を吹きながら走ってきた。
「おーい正己~、プチトマトくれるって本当か!?部活して腹へったから、食わせてくれ~!!」
トマトじゃ腹は膨れないけど、まあまあおやつにはなるかな?
一件落着?もう、こんなバカな勘違い事件は起きないだろうと、ついでに早めに収穫して冷やしていた普通のトマトとキュウリも出してやった。
僕のちぎったプチトマトを頬張るサッカー部に麦茶を出して、園芸部のみんなも休憩時間にした。
だが、僕の予想と裏腹に、今後もちょくちょく勘違い早とちり事件に巻き込まれていくのだった。
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