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何処かゆる~い雰囲気の二人組の神様と別れて、神殿かお城のような石造りの部屋に降り立つと数人の男女が立っていた。
誰かが体調不良で倒れたのか(生け贄じゃ無いことを祈る)担架で運ばれていく人も数人居たから、救世主召喚ってのは相当大変な事だったらしい。
時間が掛かったのは、神様達と雑談していただけだったけど彼等の方は魔力が足りないと思ってたかもしれない。
それで倒れた人が居たのは申し訳ない。
「ようこそ、救世主………様?えぇ?」
ちょっと!?アンタ等何故そこで疑問符付けるんだよ?
お姫様っぽい……多分だけど、そんなに年も変わらないだろう豪奢なドレスの女の子が俺の容姿を見て固まった。
居並ぶ護衛も大臣ぽい爺さんも一歩ひいて、警戒心を丸出しにした。
俺の見た目、遠くからはちょっと背の高いくらいで特徴は無いけど、兎に角目付きが鋭く冷酷そうな顔をしている。
眉は筆で描いたように整いすぎているし、先祖の何処かで西洋の血が混じっていたのか、鼻も日本人にしてはスッと高く、唇も薄めだ。
全体の色素が薄いせいで瞳も碧掛かって、美形悪役(ラスボス)系まんまなのだ。
俺が女性なら、化粧や服で柔らかいイメージに寄せて、クールビューティーだと言われてモテただろうが、威圧感が有りすぎてアダ名は【真・魔王】とつけられてしまった。
微笑めば印象が良くなる処かサイコパス殺人鬼の微笑みと言われる始末だ。
だからなのか、俺は表情が乏しい人間になってしまった。
無表情で居る方が、一番怖がられないし誤解もされないからな。
「それで?俺に何をさせたいの?一応、神様に能力貰ったけど。(もう元の世界じゃ死んでるから、ここで仕事見付けないといけないんだよな~。はぁ……ゲームも途中なの沢山有ったのに続きが気になってたのにな。あ……神様と雑談してて能力チェックしてなかった。)」
「え、えぇ?(本当に救世主なのかしら?こんな悪人面が?)」
虹夜自身はなるべく威圧感出さないように、気の抜けた顔(自称)と優しげな声を意識しているが、お姫様(仮)には魔王が目の前で冷たい目で見下しているように見えて、疑心暗鬼に陥っていた。
「……俺の顔、怖いのか。まあそうだよな……いつもの事だし。」
「(いつもの事ですって?いつも怖がられるって、一体どんな悪事をやってたのかしら?)そ、そうですか。我々の求めるものは……」
疑い深そうにお姫様(仮)が用件を言おうとしたその時、バタバタと誰かが走ってくる音がして、扉が壊れるくらい勢いよく開かれた。
「ちょっと待ってください!!ソイツは偽物です!!俺が本物の勇者です!!」
数人の見知った顔と共に雪崩れ込んできたのは、クラスでも人気の男子と取り巻きの男女だった。
所謂、スクールカーストのトップ10に入る爽やかイケメンと美少女達だ。
「俺の能力は光魔法!!聖剣使いでも有ります!!それにソイツは元の世界でも有名な不良だって噂だったんです!!」
全くの事実無根で、本来なら都市伝説の域に有る笑い話だが、ここには実情を知って冷静に突っ込みを入れてくれる大人はいない。
(へぇ?確かに能力の名前はよくあるお話の勇者っぽい感じだけど、救世主ってそもそも何をして欲しいのか判らないしな~。もしかしたら農業用の能力が必要だとかかもしれないのに?つーか、コイツだってあくまでも噂だったって言ってるし。でも、このパターン、また変な事になりそうだなぁ。)
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