2人が本棚に入れています
本棚に追加
あのノホホン二人組は、別に魔王を討伐してこいとも邪気を祓う旅に出ろとも言わなかった。
ただ、召喚術をするほどだ、余程困っているようだから呼び出した者に協力してあげて、用が済んだら一緒にこの世界を旅して回ろうって事だけだった。
その為に寿命を始め、基本的な能力は準神様基準で一般人より遥かに強力なものを付けたらしい。
チラリとお姫様達を見ると、爽やかイケメンと悪魔の幹部っぽい冷徹男(俺)を見比べて、俺の方を睨み付けているところだった。
俺は言っておくが、自分ではSっ気も無ければ寧ろ気を使って苦労してる方だと思ってる。
いやいや、本当に自意識過剰ではなく、顔が怖いからこそなるべく穏やかに周りに接しようと心掛けてはいるのだ。
家族からも「コウちゃんは悪の四天王顔だからねぇ…意地悪しちゃダメよ?悪い方にとられちゃうわ。」等と言われてきた。
小さい時は不満だったけど、時が経つとガタイも良くなり、クラスメイトに呼ばれて振り返っただけでびくつかれた時には、流石に申し訳なかった。
友人が居ない訳じゃ無いから、普通に喋ってたりしたんだけど、どうやら俺が弱味でも握って友人ゴッコさせてると思い込んでコイツは絡んで来てたよな~。
「やはり……救世主召喚に割り込む等、どうやったかは判りませんが、悪人のようですわね!!」
「そうだそうだ!!正体がバレたようだな!!この勇者、上村勇気の目が誤魔化されるとでも思ったか!!!」
「いやだからさ~、正体も何も俺は何もしてないだろう。異世界の一歩目だし(割り込んだって結局どうやったか判んないのかよ!!!?………え?ってことは協力しなくて良いってことか?)…ん?俺が何かに協力するってのはどうなったんだ?おーい?」
困り事があるので救世主という役目を呼んだというのに、目の前では俺を放っておいてお姫様と勇者(自称)のイケメンと取り巻きの女子のラブコメバトルが始まっている。
困るんだけど?俺どうすれば良いのさ?
用事無いなら後の予定が詰まってるんだけど、勝手に出ていくわけにも行かない。
そもそも此処って何処なんだろうね~?
ギリシャの神殿っぽいけど、しっかり屋内で松明がジジジ……って感じで壁で燃えている。
兵士も神官っぽいおじさんも急展開にオロオロしている。
そりゃそうだろう、魔方陣から現れたのが純正悪役面の俺で、勝手に神殿?に突撃してきた若者は正統派爽やかイケメン。
状況から見れば俺が救世主だけど、見た目がどう見ても侵入者のイケメンの方が正義の味方っぽい顔なんだから。
悪人面を排除して、ワンチャン俺が本物の救世主だったら、取り返しが付かないってもんじゃない。
「あ、あの……姫様?顔は極悪人ですが、もしかしたら我が国の問題解決に必要な者だという可能性も有りますけど?」
「巫女姫様達が倒れられたので、真贋の確認が出来ません。此処は慎重に。」
まあ……人相でいったらゴリラみたいな騎士もそこに大勢立ってるし、進言している爺さんもヒョロッとしてカマキリのようで、お世辞にも好好爺でもイケジジでもない。
人生経験が多い分、清濁併せ持つとか見た目だけでは判断しないというくらいは冷静らしい。
最初のコメントを投稿しよう!