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「何を言っているのです!!光属性で聖剣使いという立派な証拠が有るではないですか!!」
「姫様!!巫女姫様の言葉をお忘れですか!?この国の救世主だと判断出来るのは、召喚した神官達だけです!!神が授けたスキルが戦いに向くか内政に向くかは判らないのですぞ!?」
爺さんも口から泡を飛ばす勢いで諌めているから、教育係か姫様のお目付け役かもしれないな。
当の姫様はというと、自称イケメン勇者の上村にしなだれかかって腕を組んで、胸をギュウギュウと押し付けているところだった。
反対側や後ろから対抗して女子がみっちり引っ付いているのだが、お前平気なのか。
そうか、この状況に慣れてるのか。
ちょっとだけ羨ましい。
「あの~自分のもらった能力を詳しくは把握してないけど、取り敢えず調べてみます?」
「おお、そうですな。巫女姫様が回復されるまで救世主かの真偽は判りませぬ。違ったとしても此度の召喚に応じてくださったのです。城内でゆるりとお過ごしくだされ。」
爺さんもちょっと俺の顔にビビってはいたが、ソコは腹芸歴数十年、不穏分子であっても即座に対応出来るように、城内で過ごさせるつもりらしい。
「じいや!!?そんな極悪人を城内でもてなす等許しません!!救世主を騙る者など即座に追放なさい!!このような輩に何があっても未来永劫力を貸して貰うこと等有り得ませんわ!!すぐに処刑しないだけでも感謝するのね!!」
パキンッ!!!【救世主との契約が終了しました。】
「ん?あれ?俺は用無しって事になったのか?別に何もしなくて良いのか?」
ここまで言われると、ふっ……と急にこの国に対して何か助けなければ、という気持ちが萎えてしまった。
出ていって良いなら、神様コンビが楽しみにしている異世界漫遊の始まりだな。
爺さんや騎士達が姫様を宥めてワイワイやっているが、いい加減石造りの何もない部屋で立ち話も疲れてきた。
「じゃあ、俺は此処を出ていくってことで良いんだな?出口って何処ですか?あ、スミマセン。案内してくれるんですか?」
「いやいやいやいや、待ってください!!まだ審議中で、巫女姫様が御挨拶も出来てませんしー!!?」
爺さんが、鎧の騎士さんに道を聞いて外まで案内して貰おうとする俺を見付けて、老人とは思えないスピードでしがみついてきて引き留めた。
ビョーンって飛んだよこの爺さん。
「やぁ……だってさ、姫様は俺は必要ないっていうし、この後お役御免になったら知り合いの神様と、食べ歩きと絶景巡りのスローライフ約束してるんですよね~。これから北方でカニ食べ放題の季節らしくて……」
「ウチもこの季節は収穫祭前でして!!脂の乗ったジビエの祭典がありますぞ!!(いやいや、絶対こっちが本物じゃ!!ワシの研ぎ澄まされた勘がそう言っておる!!違ってても対策もせずに放逐する等、リスクが大きすぎる~。)」
腰にしがみつかれて、すっぽんのように離れない爺さんに心底困ってしまった。
俺は今まで困ってる人を邪険に出来なくて、手を貸しては手柄を横取りされてきた。
だが、周りに誤解されると判っていても、必死にすがられると同情心が沸いてくるのだ。
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