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「あーやだやだ、周りにブサ面が近寄るってる!!うちらが近寄れないんですけどぉ!!臭いも臭そうだし(笑)」
今日もまた、貴斗が居ないと聞こえよがしに誰かが愚痴を言ってきていた。
いやいや、幼馴染みで昨日も対戦ゲームで盛り上がったのに、アイツの何処をどう見たら僕を迷惑がっていると見えるんだろう?
あ、サバイバル系の対戦ゲームは僕の方が上手いから、ボコボコにするのでそこは可哀想かも知れない。
ブサ面がって?……えええ?生まれ持った容姿をどうしろと?
後、臭くない!!……と思うんだけど。自信はない。
一応は貴斗も顔は良くても、中身は年頃の男子だから、気安いおバカ話だって友達としたいだろうに、女子に囲まれてちゃまったく出来やしない。
ましてや、目の前で険悪にガンつけ合ってバチバチと火花散らしてたら、その内そういうのに敏感になって、静かな泥沼劇場が始まると、ドン引きで僕達に助けを求めてくる。
本人も喧嘩を止めようとしたが「貴斗君は黙ってて!!」「そうよ!!私が付きまとってるこの女から助けてあげるね!!」「迷惑なのはあんたでしょう!?」と激化してくる上に、口を出すと最終的にどっちの味方なの!?と責められるので、途方に暮れていた。
「…………俺、たまには野郎同士でみんなと昨日のバラエティーに出てたアイドルの話したいだけなのに。何でだよぉ。」グスグス……
最初こそモテモテで羨ましかったクラスの男子も、ずっとこの調子でトイレまでついてくる勢いで群がられたら、気の毒になってきた。
一人一人は数十秒でも、人数の関係で常に監視されてるようなものなので、すごいストレスらしい。
「サッカー部のエースでイケメンだから、色々と理想像を求められてるんだろ~な~。」
「アイドルの水着すらシャットアウトされてるのは、ちょっと同情するぜ。」
「いっそのこと誰かと付き合って、ラッキースケベに賭けろよ。」
「お前ら面白がってるだろ!?嫌だよ、もっと怖い状況になるじゃんか!!」
ちょっと下ネタ話すと大騒ぎされ、格好悪いところをうっかり出すと驚かれ、二次元にしかいない理想像から外れると暴動状態だ。
主にクレームは僕達に来るので、相当図太くないとやってられない。
かといってよそよそしい態度をとると、嫉妬で仲間はずれしたんだとか苛めてるとか何だと囲まれる。
「目立ってるのは一部の過激なファンなんだろうけど……その内ファンクラブだけで周りをかためてきそうだよね。」
「そうなんだ。クラスの委員も喧嘩が勃発したから俺は正己に変わって貰ったし。悪いな?」
本当ならクラスの体育委員や保健委員は運動部が担当するけど、貴斗が保健委員になるとなった時にクラス中の女子がキャットファイトを始めたのだ。
先生も収拾が付かない激しさで、しょうがなくウチだけは園芸部所属で幼馴染みの僕に保健委員が回ってきた。
園芸部は吹奏楽と並んで文系部の中でも体力勝負なので、クラスに吹奏楽部員が居なくて、仲の良い僕に押し付け……白羽の矢が立っ……まあ、そういうことだ。
僕になった途端に、今度は役目を押し付け合いだした女子って………中には強かに貴斗への仲介役を狙ってる子も居たので、一応騒動は収まった。
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