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「しかし、お前って彼女いるのに過激なファンが怖くて公表できないんだよな。どんどん悪循環に陥ってると言うか、詰んでるというか……。」
「えっ!?彼女いるのかよ!?狡いぞ、貴斗!!」
そうなのだ。
幼稚園、小学校と一緒だった梨々香ちゃん。
中学時代に告白して付き合い続けているという猛者が。
まだまだ小さい幼稚園の大してイケメンでもない頃から、ちょっと残念だけど優しい性格でちょっと面倒見の良い貴斗が好きだったらしい。
梨々香ちゃんも飛び抜けて美人だからか、モテる反面、ねちねちと女子に嫌がらせされたり好きな子いじりたい男子につつかれたりしていた。
貴斗はそこら辺は真っ直ぐと「苛めはいけない」と育ってたので、チビッ子の時には泥団子を投げられてべそかく梨々香ちゃんを庇って相手に殴り掛かっていたもんだ。
僕も水鉄砲で援護射撃をして、先生に怒られたのは懐かしい。
だって、僕達はヒョロガリチビとギョロ目の鼻水垂らしたイタズラ小僧だったので、当時は腕力より素早さ命だった。
梨々香ちゃんは小さい頃からクラスで一番可愛かった。
もしかすると、僕のいない中学時代に貴斗は梨々香ちゃんに恥ずかしくないように見てくれを改善したのかもしれない。
だとすると、貴斗のイケメンな見た目は、成長に伴うものに加えて、大好きな梨々香ちゃんの為のものだという事だよな?
ラブラブリア充め、爆発しろ!!!
こんちくしょー、幸せにな!!
高校からの友人が、貴斗に詰めよって根掘り葉掘り聞こうとするけど、何処で過激なファンが聞いてるか解らないので詳しくは語らないのだった。
密かに僕も梨々香ちゃんが好きだったのは内緒だ。
(まぁ、このくらいの仕返しは許してよね~。)
可もなく不可もない自分達がモテモテになることもないだろうし、普通に仲良くなって普通に彼女が一人できれば高校生活は薔薇色なんだから。
そう思ってはいたが、本人を置き去りにバトルが激化していくとは、一学期も始まったばかりのこの頃は夢にも思ってなかった。
今でも結構激しいのにこれ以上になるとは思わないって、ねぇ?
夏休みも間近に迫ったある日、僕は委員会に出席してそのまま帰ろうと思って、通学カバンをごそごそと肩に掛けていた。
ちょっとずつ、机を整理しないと最終日に持ちきれない荷物になるからね。
「おーい、水野~。」
僕が教室を出ようとした時に、丁度保険医の先生が呼び止めてきた。
あ、水野って僕の事ね。
先生の方に歩いていくと、何やらにこにこしながら書類の束を持っていた。
「いや~、すまんがこれを忘れててな。悪いが渡してきてくれないか?」
「はぁ?え、いや、僕は委員会に出ましたが、神崎さんはテニス部で大会近いから来てませんよ?」
「えぇ?さっきコートに行ったら神崎、居なかったぞ!?入れ違ったな。」
何やら急ぎの書類だけど、日直に渡し忘れて、先生自ら配っていたらしい。
神崎さんだけ捕まらなくて、保健委員だったと思い出して相方の僕に声をかけたらしい。
僕も早く園芸部に拠って、当番をこなさないと他のメンバーが待ってるのだ。
「多分、部活棟の方だと思うので校門に先回りします。裏門に先生は行って来たら引き留めておいてください。」
部活棟から帰るなら、正門の方が便利なので高確率でこっちに来る筈。
よく帰りに正門から出てすぐのファミレスで寄り道してるのを見掛けるのだ。
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