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「あ、居た。おーい、神崎さーん待ってくれ~。」
走って渡り廊下を抜けて近道していると、正門の方に向かって歩いている神崎さん達が居た。
どうやら部活は抜け出して友人と寄り道でもするのだろう。
バッチリメイクに大きなボストンバッグを持って、キャッキャと大笑いしてる声が切れ切れに聞こえていた。
声を掛けられた本人は、チラッとこっちを見たけども何も見てない風に無視して、何故か足を速めて校門へ向かっている。
(あの女~、この前態々僕に貴斗に伝言させておいて、フラれたからってまだ逆怨みしてんかよ!?)
とにかくダッシュで追い付いて、息をきらせながら何とか引き留めることに成功した。
一緒に居た友人が、流石に大声で呼び続けられるのに恥ずかしさを覚えて、限界になったのだ。
「チッ……何!?」
「い、いや……ちょっと、これを……ゼェハァ……渡しに…大事だか…ら、明日まで……ゼェハァ……読んで、持ってきて。フゥ……僕も今日は急ぐから、よろしくね。」
舌打ちされたし、凄く怪訝な顔されて受けとる時も不満そうだったけど、スタスタ行っちゃうから呼びながら走ったんだよ?
少々の息切れくらい見逃してよ。
それに僕は一応は文化部(?)で、さぼりがちだとは言えアスリートの体力とスピードに着いていけないのも仕方無くないか?
渡すもの渡したから、さっさと僕は退散して水撒きと草抜きに行かないととっくに当番の時間が来ている。
途中で先生と合流して、無事に渡せたと報告したら、ジュースをくれた。
よれよれしながら当番に行くと、すでに草抜きは終わって水撒きのホースを準備しているところだった。
その後、ホースが蛇口から外れるというハプニングは有ったけど、何とか最終下校時刻には間に合って園芸部員は薄暗い道を帰っていった。
ちなみに園芸部には野菜畑が有り、トマトと唐辛子、茄子とピーマンとゴーヤが植えられていた。
ゴーヤは畑ではなく側の窓辺のグリーンカーテン用だけど、野菜は出来たら採って帰って良いそうなのでみんな張り切っていた。
一方、薄桃色の厚目の封筒を渡された神崎いちごはそれをカバンに仕舞うこともなく、グチャッと握り締めて顰めっ面していた。
「うわ……今時、手紙って古っ(笑)」
「あー!!!マジキモい。息荒くして近付くなっつーの!!」
ビリビリビリッ!!
超イケメンの貴斗に何故あんなショボいのが付きまとっているのか、神崎には理解不能だった。
態々人の多い校門で呼び止めてきたのも、告白の邪魔をしたのも、その後のフォローやなんかも全然しなかったのも気に入らない。
その上、女子に馴れ馴れしく話し掛け、理由を付けて用事を押し付けるなんて、モブ男のクセに調子のってんじゃないわよ!!
正己からすれば、毎回話し掛ける時は先生の用事があったからだけだった。
告白に関しては元々貴斗が彼女一筋で脈無しだったし、話し掛けたり用事を頼むのも、同じクラスの委員で、ちょくちょく部活で抜けたりする神崎に連絡する事だって有るというだけの話だ。
思いっきり封筒をビリビリにして近くのゴミ箱に捨てた神崎は、友人と一緒にコンビニに拠って限定スイーツを買い漁り、ストレス発散したのだった。
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