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アレンの襲撃とは時間が前後し、襲撃の約二時間前。 ランドとマリアは無人島で大量の食べ物を集め当面の生活の心配はなくなっていた。
「無人島かと思ったけど、結構色々と豊富なんだな」
「本物の自然って凄いのよ? 人が想像するよりも豊かだから」
「確かにそうなのかもしれない。 だけどこの島だから道具もあったし小屋もあった。 今回は本当に運がいい」
「・・・」
マリアは何かを考えているようだった。
「マリア? どうした?」
「あ、ううん。 何でも」
どこかそわそわしているような気がする。 個人行動している時に何かあったのだろうか。
「それにしても、偶然ここへ辿り着くものなのかな? 僕たちが乗っていたボートにはオールもなかったのに」
「ランドの日頃の行いがよかったんじゃない?」
「そういうことはないと思うけどなー・・・」
そう言葉を返しながらランドは先程拾った装飾品を取り出した。
「そう言えばマリア。 これを拾ったんだけど、何か分かる?」
「ッ・・・」
「ん?」
ランドからしてみれば少し聞いてみるくらいのつもりだった。 だがそれを見た瞬間、明らかにマリアは動揺したのだ。
「な、何だろうね? 漂流してきたのかな・・・?」
「いや、これは島の中央へ行った時に見つけたんだけど」
「・・・」
海岸線沿いならまだしも、水の全く通っていない中央陸地まで辿り着くことは有り得ない。 マリアの様子もおかしいし、装飾品は明らかに無人島に似つかわしくない。
「ねぇ、マリア。 何か隠してない?」
「何も隠してないよ」
マリアは首を横に振っているが、目が泳いでいる。 それを隠すためか壁際へと歩き始めた。
―――・・・マリアは嘘をついているような気がする。
風通しや採光のために作られただろう窓というより穴を眺めながらゴミを掃除している。 だが小刻みに身体が震えているようで、何か知っているのは間違いないと思えた。 マリアの傍に近付き腕を取る。
手荒な真似をするつもりはないが、尋ねただけでは答えそうにないのだ。
「痛いよ、ランド」
「隠し事なんてマリアらしくない」
「だから隠し事なんて」
「俺の目を見て。 本当に何も隠してない?」
「・・・」
「マリア?」
尋ねながら掴む手に力を込める。 マリアは苦痛に表情を浮かべ降参した。
「・・・分かった。 全部言うよ」
「本当?」
「うん。 だからお願い、手を放して・・・」
言われたままに手を放すとマリアは全てを白状した。 アレンとは協力関係にあったこと。 ランドの襲撃の情報を掴んでいて、守るための手段がこれしかなかったこと。
この島で生活できるよう準備をしたのはマリアで、以前島へ来た時に装飾品を落としてしまったこと。 実は城からそれ程離れていなくすぐに戻れるということを。
「じゃあ今頃アレンは!?」
「危険なことはしないから大丈夫だとは言っていたけど・・・」
「絶対に大丈夫じゃないだろ!」
―――今僕の服がないのが何よりの証拠だ。
―――アレンは僕に成りすまそうとしたに違いない。
ランドを襲撃しようとしているところ、アレンが成りすましているとするのなら、それは考えなくても身代わりになろうとしたことが分かる。
そうでなければマリアはランドと共に無人島へ来ることを了承するはずがない。 無人島は無人島で危険であるし、ランドはやはり一国の王子なのだ。
「今から城へ戻るぞ!」
「でも今戻るのは危険だから!」
「確かに僕が死ねば縁談はなかったことになるだろう。 だけどそれは二国間の平和が永久に潰えてしまうということだ」
小屋を出ようとするランドの腕を今度はマリアが掴んだ。
「ランド王子。 危険に晒すことが分かっていて行かせるわけにはいきません!」
凛とした目はまるでランドを射抜くように見つめている。 力も女性とは思えない程強く、メイドとしてランドの命を預かる使命を背負っているのが分かった。
「・・・マリア」
真剣なマリアの目を見てランドは彼女の手を覆う。
「・・・この島にいる時は主従関係はなしにしたはずだ」
「ッ・・・」
「今の僕と君は対等の存在。 同じ立場に立つ君が、僕を止めることはできないよ」
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