17人が本棚に入れています
本棚に追加
二人の関係がギクシャクしても構わず学生生活は続いていく。 他にも生徒はいるため友達に困るようなこともない。
だがだからと言って、アレンとの関係を白紙にしてしまう程ランドは冷血漢でもなかった。 二人は互いにしこりを感じながらも、行動は共にしていたのだ。
そして年齢を重ね15歳になった頃、学校からの帰り際にアレンが言った。
「先生に用があるからランドは先に帰っていいよ」
「いや、いいよ。 ここで待ってる」
深い意味はなくただ一緒に帰るためにそう言っただけだが、アレンはどことなく顔をしかめていた。
「でも長くなると思うし」
「それでも待ってるよ。 僕はアレンと一緒に帰りたい」
「・・・そう」
アレンが先生のところへ行っている間、昇降口に置かれている本を読みながら時間を潰していた。 だが出ていってから三十分が経過すれば、帰りが遅いと感じるのも無理からぬこと。
―――先生に何の用だったんだろう?
―――聞いておけばよかったかな。
周りを見渡してみたがやはりまだ戻ってくる気配はない。 読書を再開しようと椅子に座ったが、アレンのことが気になり集中できなかった。 学校はシンと静まり返っているがどこか落ち着かない。
―――もしかして何かあったのかな?
本を置くと心配になって探しに向かった。 すると職員室へ向かっている最中、少し外れた廊下の先から不穏な雰囲気の声が聞こえてきた。
―――大声を出しちゃって、一体どうしたんだろう・・・?
物陰に隠れ、こっそりと様子を窺ってみた。
「王子様と仲よくしちまってよ! 俺たちに自慢して見せびらかしてんのか?」
「そんなこと・・・」
「お前は王子にいいように引き立てられているんだよ。 常に隣にいるからって調子に乗るな」
―――ッ・・・!
そこに複数の男子に囲まれ、しゃがみ込んでいるアレンを発見した。 アレンがいじめられているのを見てすぐさま止めに入った。
「君たち! 止めないか!!」
「マズいッ。 見つかった!」
いじめっ子はランドを見ると一目散に逃げていった。 どうやら王族のランドに手は出せないらしい。
―――その反応もあまり嬉しくないけど・・・。
平等を望んでいるランドにとって、未だに区別されているようで嫌だった。 とはいえ、仕方ないということも分かる。 ずっと続いてきた慣習を変えることなんて無理なのだ。
「アレン! 大丈夫?」
いじめっ子たちが見えなくなると、すぐさまアレンに近寄り手を差し伸べる。 アレンはゆっくりと手を近付けてきた。
―――・・・え?
しかし、その手は振り払われてしまう。 アレンは手を振り切ったまま、物凄い形相で睨み付けてきていた。
「今のを聞いて分かっただろ!? もうランドと一緒にいるのなんて懲り懲りなんだよ!」
「アレン・・・」
「頼むからもう僕には関わらないでくれ!!」
この場を去ろうとしたアレンの腕を咄嗟に掴んだ。
「待ってくれ! アレンは僕が王子だと知っていたんだろ?」
「・・・あぁ。 出会った時から知っていたよ」
「それなのにどうして僕と仲よくしていたんだ?」
尋ねるとアレンは言いにくそうに顔をそらした。
「・・・両親からは『王族とは仲よくしないように』って言われていた」
「え・・・」
庶民が王族との関係を持ち、王族に対して粗相してしまったら庶民はどうすることもできない。
もちろんそれは貴族を相手にしても同じで、身分をいくら平等にしようとも持っている力が違い過ぎるため仕方がないのだ。
だが庶民同士でも同様で力を持たないものは力を持つ者に対してどうしても下手に出ざるを得ない。 アレンは涙目になっていた。
「でもランドなら、信用できると思ったから!!」
「ッ・・・」
「・・・だけどもう終わりだ。 僕はもうこんな学校生活なんて送りたくない!」
アレンはランドの手を振り払い去っていった。 もちろんランドが何かをしたわけではない。 ただ嫉妬する人間は確実にいて、ランドはそれをどうこうすることができない。
王族の力を傘に着れば、全てが台無しであるからだ。 それからアレンとは話す機会がなくなった。 だがそれでも一つだけ決めていたことがある。
―――もし僕のせいでアレンが困るようなことがあれば、僕がすぐに飛んでいくから。
―――・・・だからアレン、安心して。
アレンのことは守ろうと思っていた。 もしかしたらそのような気遣いがバレて、逆に嫌な思いをさせていたのかもしれない。
ちなみに何かあった時の対処をマリアに頼んでいたため、それ以降のことはマリアも知っている話だった。
最初のコメントを投稿しよう!