無人島王子

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ランドは王子としての勉強はしているし武術等も習っている。 だが単独でサバイバル生活をする予定は当然なく、経験も知識も足りなかった。 ―――木の枝を集めるだけって、明らかに楽だよなぁ・・・。  とはいえ何が食べれて何が食べれないのかランドには分からない。 木の実やキノコなど生えてはいるが、流石のランドでも毒を持つ植物やキノコがあるくらい知っている。 美味しそうに見えるものも、もしかしたら、と考えることで迂闊に手が出せなかった。 ―――そう言えば・・・。 薪を拾いながらこの島に来る原因となったアレンのことを思い出した。 ―――アレンと出会った時、彼は兎を採ろうとしていた。 ―――僕も同じようにできないかな? ある程度集まった薪を持って小屋へと戻った。 薪を置き何か道具を探してみるも当然小屋に銃なんてものはない。 「そんな簡単に見つかるわけがないか・・・」 だが探しているうちに錆びた刃物を見つけた。 何とか木の枝を切り出すことくらいはできそうだ。 「んー・・・。 弓矢とか?」  ランドは教育として弓矢の射方を教わっている。 枝をある程度集め終えると弓矢を作ってみることにした。 「よし。 やってみるか!」 しなる枝と蔓で弓を作り細長い枝を削って矢を作る。 落ちていた鳥の羽を矢にくっつけて完成だ。 「おぉ。 案外やればできるもんだなぁ」 想像以上のものが出来上がり満足だった。 「試しに飛ばしてみるか!」 外へ出て早速弓を放ってみる。 ランドの手元から放たれた矢は最初こそ勢いがよかったものの、次第に速度を落とし落下した。 ―――・・・あれ?  どうにも思ったように上手く飛ばない。 自作の弓矢を見てみるが、目立っておかしな場所は見つからなかった。 ―――マリアにでも聞いてみるか・・・? そう思い動かそうとした足を止める。 ―――・・・いや、止めておこう。 ―――僕自身の力でやることに意味があるんだから。  それからランドは素材を工夫し、何とかもう少し完成度の高い出来の弓を作ることができた。 「よし。 時間もないし早速実践をしよう」 外へ出て獲物がいないかを探す。 すると木の陰に運よく野兎を発見した。 ―――いた!  狙いを定め放ってみる。 だが想像以上に小さな獲物を捕るのは難しかった。 兎は矢が地面に刺さったことに驚き一目散に逃げていく。 ―――駄目か・・・。 次の獲物を探すため島を歩き回る。 その時島の中央にも足を踏み入れた。 「ん? 何だこれ・・・」 するとあるものを発見した。 無人島には似つかわしくない装飾品で、しかも真新しくほとんど汚れていない。 高価なものには見えないが、やはり人の往来が最近会ったのだと確信した。 ―――どうしてこのようなものがここに? ―――・・・まぁいいか。 ―――この島は人の往来があるみたいだし、特別おかしくはない。 そう思いあまり気に留めなかった。 だが念のため回収だけしておく。 「さて。 マリアだけに任せられないからね」 その後もたくさん歩き回りやっとのことで野兎を一匹仕留めた。 「やった! 僕にもできた!」 初の確保に喜び、小屋まで戻ると丁度マリアが現れた。 「ランド、凄いね! 自分で弓を作ったの?」 「そうだよ。 そこら辺にあるものを集めてね」 「やっぱり凄い。 婚約したお姫様を羨ましく思っちゃうくらい」 「いやぁ、それ程でも・・・。 って!」 だが現れたマリアは山のような食べ物をカゴいっぱいに持っていたのだ。 木の実やキノコや芋のようなもの、更にはランドが獲るのに苦戦した野兎も入っている。 「凄過ぎ! やっぱりマリアには敵わないなぁ」 「そりゃあメイドだからね?」 「そ、そういうもんなのか?」 ―――それ、メイドと関係ある? ―――流石にメイドでもここまでの知識を持っているって普通はなくない・・・?  ランドは少し疑問を持つ。 だがその思考の先にある答えに辿り着くまでは至らない。 ―――でもまぁ、案外無人島での暮らしも悪くないのかもな。 アレンの件のことは心配だが、ここは新しい発見ばかりで少々心躍っていた。 今頃、自国で大変な事件が起きているなんてことは欠片程も知らずに。
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