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ランドが無人島に漂着した数時間後のことになる。 城はランド王子と隣国の姫の結婚に反対する勢力の襲撃を受けていた。
―――やっぱりこうなると思っていた。
―――・・・先にランドを逃がしておいてよかった。
かなり周到に練られていた計画のようで、易々と城への侵入を許してしまっている。 兵たちの話によると、どうやら内通者もいたようだった。
―――内通者がいただなんて本当に酷い話だ。
―――この城は色々と緩い。
―――現に今、僕がここにいることも不思議なくらいだ。
―――城の者は本物の王子と僕の違いにも気付けないのか?
王子に変装したアレンは、自室で避難するよう言われている。 とはいえ、隠し通路があったとしても流石にアレンが知っているはずもない。
外からは物騒な声が聞こえてくるし、金属の打ち合う音も響いている。
「王子さえ殺せばこの縁談はなしになる!」
「そうだそうだ! 二人が結婚したくらいで、長年積もり積もった恨みをなしにしてもらっては困るんだよ!」
堂々と王子を殺す宣言。 それらの言葉は窓越しでもよく聞こえてきた。
―――これをランドが直接聞いたらどう思うのか・・・。
国民は暴徒のようになだれ込み城の兵士と戦いながら進んでいく。
―――・・・もうこれ以上は見ていられない。
―――城内を突破されるのも時間の問題だろう。
アレンは決心してドアへと向かった。 開けるとドア前で待機していた警護の兵士が止めに入る。
「ランド王子? どうなさいましたか?」
「・・・」
「王子!? 駄目ですよ! 外は危険です!」
アレンは何も言わずに足を進めていく。 外では一人また一人と兵士が倒れているだろう。
―――流石に兵士でも数の暴力には勝てないということだ。
「ランド王子! どこへ行くのですか!? 危ないですから避難を!」
周りの声を無視しアレンは城の玄関へと向かった。 結局のところ、この暴動を止められるのはランド王子しかいない。
そしてランド王子は無人島に“送った”ため彼に扮した自分が何とかするしかないのだ。
「ランド王子! お止めになってください!」
力尽くで止めようとしてくるが、鍛錬を怠らなかったアレンは兵士でも簡単には止められない。
―――そういうのが緩いんだよ。
―――今は僕だからいいけど、本物のランドでもこうやってすぐに引き下がるのか?
疑問を持ちながら自ら扉を押し国民の前に姿を現す。
「ランド王子だ!」
その声により一斉に国民は王子に注目した。
「ランド王子! アンタに恨みはないが死んでもらうぞ!」
「王子に向かって何という言葉を!」
「殺されるのが嫌なら結婚の話はなしにすることだな!!」
「このッ・・・」
兵士が前に出ようとしたのをアレンが制した。
「ランド王子・・・?」
城の兵士を制しながらアレンは一歩更に一歩と足を踏み出して言った。 徐々に国民との距離が近付いていく。
「・・・僕は抵抗しない」
「ランド王子!?」
「だから暴動を止め、これ以上互いに血を流すことは止めてくれ。 今は兵士も国民を相手にしているという遠慮がある。 しかし、それがなくなればこの国は地獄と化すぞ!」
「ランド王子! 何を言って!」
―――・・・王子の声の違和感にも気が付かないのか。
兵士にもかかわらずランドのことをよく知らないことを寂しく思った。
「早く斬れ!!」
「ッ・・・!」
おそらく暴動の指揮官だと思われる男の言葉で一番近かった国民がアレンに向かって剣を振り下ろした。
「ランド王子!!」
兵士が慌てて駆け寄ってくるが、アレンに抵抗する気がないためもう遅い。
―――・・・甘いな、王子は。
―――結局平等なんて無理なんだよ。
―――・・・だけど、僕がランドに救われたのも事実だ。
肩口から大きく斬られ、血がドクドクと流れている。 全身から力が抜け、死が訪れようとしているのが分かった。
―――僕はここで人生を終える。
―――ランドを守って終えられるなんて本望じゃないか。
そう思い目を瞑ろうとした瞬間だった。
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