無人島王子

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無人島王子

煌びやかに輝くシャンデリア、この世の贅を尽くされた料理。 盛大に開かれたパーティが自分のためであると分かっていても、心から喜ぶ気にはなれない。 18歳になり隣国の姫との婚約の儀を終えた。 国力に差がある二国間での政略結婚、表では口にすることはないが事実はそういうことだ。 「ランド王子。 おめでとうございます」 「あぁ、ありがとう」 「どうかお幸せに」 身内からは祝福の声が上がる。 一つ歳下の婚約者は既に国へと帰っている。 残念ながら第6王女である彼女にあまり自由はない。 ―――友好的ではなかった国同士の関係が深まるということで、僕たちは婚約をすることになったけど・・・。 それを望まぬ人間も当然いた。 だが利益の方が多いということで多数決で決まったのだ。 「私はまだ隣国の姫との婚約は認めていないんだがな」 「あぁ。 王子と姫が婚約をしても絶対に友好的にはならないだろう」  パーティにいる貴族がわざとランドに聞こえるよう大きな声で話している。 それを聞いて当然いい気はしない。 だが視線を向けるとわざとらしく顔を背け知らないフリをする。 面と向かって王子に意見などできるはずがないのだ。 「ランド王子。 どうかお気になさらず」 隣にいるメイドのマリアが小声でそう言ってきた。 「・・・あぁ。 分かっている」 数時間経つとパーティーもお開きとなった。 だが今日はこれだけでは終わらない。 「行こうか、マリア」 「はい」 18歳ということでもう一つランドにとって重要なイベントがあった。 メイドであり、幼馴染であるマリアを連れて城の外へと出る。 「久しぶりなんだよな。 アレンと話すの」 かつてランドには仲のよかった少年でアレンという名の者がいた。 だが庶民である彼との関係は長く続かず、成長するにつれアレンの方から近付いてこなくなったのだ。 ―――僕から離れていった理由は何となく分かっている。 ランドはそれでもアレンと仲よくしたいと思い近付いていたが、アレンがそれを受け入れることは決してなかった。 時間とは酷なもので、次第に二人の間の距離は広がり溝ができた。  もう過去のような関係には戻れない、お互いに忘れて生きるしかないのだろうか。 そのようなことを考えていたある日、件のアレンから接触があった。  『過去を忘れ友好関係を築きたい。久々に会って剣の手合わせをしてほしい』 と先日メイドのマリアを通し頼んできたのだ。 ランドからしてみれば渡りに船、昔のように戻れると期待に胸を膨らませた。 ―――アレンの頼みを断るわけがないだろう。 少しばかりパーティーでげんなりしていたが、剣の手合わせを間近にすると気分が上がった。 「表情が戻ってきましたね」 「あぁ。 正直パーティはとても面倒だった。 婚約者のことは正直悪く思っていないけど、大恋愛の末に、とかじゃないからね。 まぁ、今からアレンとの時間が楽しみだ」 だがそのようなランドとは反対に城を発つ時のマリアは神妙な顔をしていた。 「何か気になることでもあるのかい?」 「・・・あの男の子ですよね?」 「そうだよ。 マリアには何度も話したことがある」 「随分と急な話だと思いまして」 確かにそうだ。 嬉しくて浮かれていたが何故今になってと思わないこともない。   ―――あまりにも嬉しい展開過ぎてすぐに返事をしてしまったんだよな。 ―――何も後先を考えずに。 ―――でもそれは、信頼できるアレンだからすぐに返事ができたんだ。 「互いに18歳になったから、けじめをつけるということじゃないか?」 「・・・まぁ、そういうことにしておきましょう」 執事に行き先を伝えるとアレンと待ち合わせている場所へと向かった。 初めて出会った思い出の場所をバックに、少し開けた場所。 芝が周りに整備されているがそこだけは土がむき出しになっている。  とはいえ、実際に訓練をする場所でもあり突起物や石のようなものは見当たらない。 辺りを確認しながら待っているとアレンが現れた。 「アレン!」 いや、待ち合わせ場所に来たからアレンだと思ったが、何故か顔を隠していて顔は見えない。 声をかけたのはアレンと思われる男から声を引き出すためだった。  ランドは少しばかり不信感を感じつつも自ら近付いていく。 「久しぶり! アレンだよね? 元気だった?」 「・・・まともに話すのは三年ぶりだね」 その声は確かに聞き覚えのあるアレンのモノだ。 声変わりもしていないし、昔のままの声を聞けば思い出が蘇る。 「もうそんなに経つのか。 お互い成長したな」 ランドとは同じ学校に通っていた。 成長しているが声だけは聞き間違えるはずがない。 「ん? ・・・どうした?」 アレンは突然俯いたまま更にランドに近付いていく。 するとアレンはランドの耳元で言った。 「・・・ごめん、ランド」 「え?」 その瞬間大きな衝撃を身体に受け、ランドは気を失った。
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