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ぷしゅるるぷしゅん、と音がして、bossがぺしゃってつぶれた。
「…え?」
紫っぽい画面の色がどんどん明るい蒼に変わってく。
「…え?…え、え、…え?」
やっすい鐘みたいな、ガラスをチロチロんて撫でたみたいな音が鳴って、光だ、光。
"世界"が光に満ちてゆく。
「……おい、まじかよ。」
まじ。大まじらしいぞ。
ほらエンドロールだ。
「………おい、ぅおおぉいっ!」
叫んでいいかな。叫んじゃお。
「早い!!早すぎるやろっ!!」
お構いなしにのびのび続くエンドロール。
確かにな、
最近無双にはまってた、
そもそものプレイ時間、"気ぃ狂うほど長い"に慣れてた。
それは認める。
加えて一周回るに120時間は掛けすぎやろってそれも思う、
そんなんヤり込み出来るかっ
やってられっかっ!
俺はなぁっ!
まだまだ未来も希望もある若者なんやっ!
一人勝手に自宅内孤島にボチボチチマチマ内側から段ボ積んで篭ってる廃人じじぃと一緒にすんな。
俺らはまだまだ部屋ん中以外に、ガッコとか、ツタヤとか
まねきねことか、フルイチとか、いおんとか、行かなあかんとこ、いっぱいいっぱいあって、行かへんかったら俺に
「ちゃんと来い、はよこい、」てがしがし言ってくる奴らとかが、イッパイおんねん。
どの世界からもアンタナンカ用ナシ~、たったとシネバぁ、ていわれ慣れてる二十も過ぎたおっさんらみたいに、
ゲームばっかり相手してやるわけにはいかへんのじゃ。
と、思てる。認める。
けどな、けどっ!!!
12時間でラスボス完全陥落は、
「早すぎるやろっ!!!!!」。
…幼稚園児かおれは。ハジメテのすぃっち、か。それでも3日くらいは遊ばせてくれるで、きっと。
あーしんど。あー疲れた。
あかん、熱ぅなって騒いでもうた。うわ、おかんに怒られる…。絶対聞こえた、絶対聞こえてるわ。
も、はよねよっ!はよねんと。
画面のエンドロールをたったとせかしてセーブする。
こんだけ文句垂れながらもスイッチぶち切ったりはしない。生まれたときからゲーム機に育てられた俺らの悲しきサガである。
とりあえずセーブ。
二度とプレイしないかもしれないけど、した分はセーブ。俺の時間は1秒でも無駄にはしない、されない。
ちなみに選択、間違えたら嫌やしなぁ、のときはセーブファイル5つはデフぉでしてますね。
階下にいるはず、のおかんは静か。よしよし。
スマホを手にしてベッドに潜った。さくっとでれすてでもして寝よ。
あれ?RINEの色でちかちかしてる。ほえ、誰かなんか来とったん?わ、ぜんぜん気がつかへんかったな。誰や?…怒ってるかなぁ。
「完全無料本格RPG!」
なんや、ゲームのアプリの広告やん。広告やな。…タダなん…?タダみたい。
「生涯無課金!」
ウソつけ!ゲタゲタ笑たるわ。無料で無課金て、おまえらどやってメシくうねん。
…広告がムゴイ、それか。
今どき今さらそれで儲けるつもりは、ある意味畏れ入るわ、感心するわ。
詐欺ぶっこんでタイホされろ。
けどあれやん?
これRINEのゲームやんな?
ほんならそんな巧妙にしこんだフィッシングえろえろサイトやら、おらおら俺に振り込めや やら、恥も外聞も身も蓋もなし、とにかく有り金全部搾り取ったる体制を、ベネズエラやコートジボワールやジンバブエはともかくどこやねんそこ、地球上にあるんか?な拠点からカネクレカネクレカネオクレ システム構築してガンガン営業活動に振り切ってます!て度胸があるはずもない。
よし。おもろい。
いれたろ。落としたろ。
実に面白い。
(どうでもいいけど、俺は今、ちゃんとjojoだちで決めて、しかも決まってるど。よう見てや。)
…あ、はいった。
アッサリ入ったな。カルイんかな、ま、それは何よりやけど。カルイにこしたことないし。
で、なんのゲームや、これ。サクッと入れてみたけど何のゲームか知らん、若しくはわからへん。
これ、ゲーマーあるある、なんちゃうかな。
ビンボーやけどくそゲー割りとLOVEなんよの奴等の。
よう知らん、でももう落とした、て。
同士よ。
キミも、オレと一緒に、魂を見るか…?
え…と。
やがていつかあとからくるこのために。
RPGか。なんやろ…ヒグラシの系譜みたいなんかな…?
ほー、らっぁっ…て。
ちがうか。
…このwithMasterて、なに?
絵でえへんかなあ。
絵柄見たいよなぁ。
どうしようかなあ。
もうだいぶ遅いからさ、入れるだけにして、やるのはまた明日、にしたいんやけど…。
…………。
設定だけしよっと。
プレイ
はじめから つづきから
はじめから。
固定 遊動
なにそれ。なに?俺モンスターになんのん?モンスターでgo?
あ、説明あった……。
えーと、
「固定・遊動は設定を優先するかどうかです。固定を選べば設定から解離しません、例えばjobを戦士で選べば、自らjobチェンジを設定しないかぎりずっと戦士です。固定はjobに限らず全てを自分で設定します。設定は自ら変更しない限り揺るぎません。
逆に遊動を選べばその場面ごとに自動で全てが切り替わります。切り替わりはランダムに行われ、ストーリー状の優位は考慮されません。jobに限らず全てがランダムに切り替わります。」
うわ…ぁ。
…ぶっちゃけあんま(ほんまは全然)、わからん。
解るのは、多分遊動、てしたら、もしかしたら全部ランダムで勝手に設定されてくのんかもしれん、てことくらい。
まあ、ゲーマーとしたら、ほな遊動でタイムアタックやなっ!とかになるんやろけど…。
まともいうか通常いうか無難なんはまず固定で一辺ヤってみて、…やろな。
悩むなあ、ここ。
完ぺき設定作り込んでからの、てのもアリやろ、やしなあ。
あ?
「固定・遊動はいつでも切り替えできます。ステージの途中でも可能です。固定の詳細設定もいつでも変更可能です。」
へ。それ、コワイモンなしシステムやん。
で、わ、。
俺は陽気なゲーマーやから遊動にしよっ と。
遊動で。
「プレイ中は常にオートセーブです。」
あ。…はい。それはまあ、しゃあないか。
選択不安やったら、カモン、エターナルRe.try、てことかな。
りとらいまつりだ、わっちょい、て。
「ステージ内はallfree、openworldで展開します。各ステージ毎に存在するボスを倒し、更なる高みに進んでください。ステージはランダムに提供されます。クリアを重ね、未来へと続く道をウシロに標して行ってください、」
…。はい。(やっぱようわからん。ま、ええやろ。やったらわかるで。)
「ただ、あなたは孤高で孤立ですが孤独ではありません。」
はて?…ぼくら世代はもはやボッチに偏見偏向ないですけどォ?
焼き肉も回転寿司も映画もカラオケもテーマパークも全然余裕で、お一人様できますが。
美味しいもんは美味しい、楽しいことは楽しい!
…そゆことじゃない?あ、…そうですか。すみません、
聞きます。
「あなたの冒険は独りでではありません。」
…酒場に入ってトモダチ金で雇う、ですね。それともモンスター半殺しにしてから、混ぜて、て言うやつを拾う?
「Masterと共に進むのです。」
それでwith。そゆこと。
えー…っ、ぼく、共に進むならMasterよりふぉーすがいいでぇーす。
俺昔強かったしー、なじじぃとのゲロゲロ道中記、わぁすってきぃ。げろげろ。
聞いてもないのに若いときはイケメンでモテモテなんやんな、きっとな。
年いった今、通りすがりの気のいい若者脅かして、介護しろと、お前に見捨てられたら野垂れ死ぬしかないねんとかのプレッシャーら無駄にかけて、ただ働きさせるんや。きっときっと鬼畜のキチクじじぃ。
「黙れ黙れ黙れこのクソガキっ!!」
…え?
だれ?だれの声?
「さっきから黙って聞いてれば、次から次へと、屁理屈小理屈ゴネマクリやがって。まずはそのふざけた根性叩き直してやるわっ!!」
…え?え、…もしもし?
「くらえっ!正義のいかづちっ!」
きゃあああぁぁぁぁぁっっ
バリバリビシャンて確かに鳴って、目の前が真っ赤になった。これは本当のハナシ。
ぷしゅるるー、てぷよぷよの焦げたやつみたいなキモチ。
どすどすどす、がこん!!
「まさるっっ!!」
…やばい、おかんや。
遠ざかる意識のなか最後に僕はそう思った…。
「何やってんの、あんたはっ!
何時やおもてんの!ゲームばっかりしてて。もぉ明日弁当つくったらへんからねっ!はよ寝なさいっ!明日起こしたらへんからっ自分でちゃんと起きて行きなさいよっ!!」
…おかーちゃん、ちゃんと見て。俺動かれへんねん…。
「ほんまにもおっ!!」
ビシャン。どすどすどす、
…ああああ、おかーさぁぁん…。
「ふん。たワイもない。」
「おまえっ!」
誰か知らんけど、俺のスマホに何すんねん。電気なんか通して何してくれてんねん。壊れたらどうすんねん、てかフツー壊れるやろっ!もう買って…あれ?
「…気がついたか?」
「…スマホ壊れてない?」
「そういうことだ。」
「…誰やねん、お前。」
俺のんとそっくりのスマホがもう一台、目の前にプカプカ浮いとる。
「Masterだ。」
「…お前、スマホなんか?」
「お前が設定せんから姿が定まらんだけだ。」
「…俺、遊動にしたど。勝手につくれや?」
「キャラクター設定の最大の優先権はユーザーにある。」
「なんやそれ。いちいちつくったらなあかんのか?…ほなお前、おとなしい待っとれや。俺が設定するまでなんでちゃんと待ってへんかってん。」
「ほう。確かに。
…お前が正しい。」
え?キショイくらい素直…。
でもなんでもええわ。俺もう寝たいねん。今日は。
「わかった。旅立ちは日の出のあととしよう。」
ぽんとニセモンのスマホが消えた。
俺はもうなんにも考えたくないので、蒲団に潜り込みます。(念のためスマホの電源切りました。)
ほなね。
俺の名前は 尾田牧 賢。
中学二年のど真ん中。
住んでるとこもwesternのど真ん中。
トンでもないことに巻き込まれたかもしれへん、の予感を、思いきり無視することにした春のはじめの夜のど真ん中。
…いま、そこ。
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