空の温度

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「あのっ……すみません。僕、いつもここに来るんですけど……はじめまして、ですよね? ここで、こんなところで何してたんですか?」 それはどこにでもいるような普通の、ちょっと気の弱そうな少年だった。 「別に…ただ景色を見ていただけ。」 そう、景色を見ていただけだ。なにも考えてなどいない。そう自分に言い聞かせた。 人のいない廃ビルの屋上で、景色を見ていただけ、なんて言い訳が通用するとは思っていなかった。 けれど少年は、追及することなく話を続ける。 「そう…ですか。 ここの景色いいですよね。僕大好きなんです。すごく遠くまで見えるし、あ、ほら、あそこに海も見えるじゃないですか。」 この少年はなぜ私に話しかけたのだろうか。 私は1人になりたかったからここに来たのに、とんだ邪魔が入ってしまった。
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