空の温度

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「そんなことを聞かれたのは初めてだよ。普通そういう言い方をしたら相手を煙だと思わないだろ。」 変なことを言う少年だ、と思った。 「そうですか?でも僕にはあなたが馬鹿には見えませんし。」 やっぱり彼は、変なことを言う。 「人は見た目じゃわからないよ。どんなに優しそうに見えたって、腹の中じゃ何考えてんのかわからないのが今の世の中だ。」 「なにかあったんですか?そんな言い方するなんて。」 「なんにもないよ。ただ少し疲れただけ。」 そう、何もなかった。何も無かったのに私が勝手に疲れただけ。 「そうですか。でも、なんとなく分かります。 今はいくらでも自分の代わりがきく時代ですから。最初は甘い言葉を囁いてる人だって、価値がないと思ったら手のひらを返す。ずっと信じてた人だって…簡単に裏切る。」 その通りだ。だからここに来た。でも、彼はそれも知らないはずなのに……。
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