空の温度

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「……」 「人生にリセットはありませんでした。あったのは、ロードも上書きも出来ないセーブだけ。人生を中断して、また最初からやり直そうなんて、そんなの甘かったと気づくのは、取り返しがつかなくなってからです。」 彼は言った。"気づくのは、取り返しがつかなくなってから"。 ならば、気づいている彼は?私の目の前で、まるで見てきたかのように話す彼は、 「僕はそんな人たちをずっと見てきた。この、やり直しの効かない体で。ずっと。ずっと。ずっと1人で。」 "やり直しの効かない体" その言葉は、私の思考を裏付けるには十分だった。 「それじゃあ、君は」 私が言わんとすることがわかったのか、彼は言葉を遮って話す。 「ねえ、お姉さん。やめた方がいいですよ。何をとは言わないけど。でも、こんなことより他の方法を探す方が賢明です。お姉さんは馬鹿じゃないはずだって、僕は思ってますから。」
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