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「そんなもの、無い方がいい。」
彼は、いとも簡単に、私の言葉を否定する。
「そんなもの、か。でも、私にとっては何よりも欲しいものなんだ。」
「そんなもの、いらない。」
彼は過去を振り払うかのように繰り返す。
「そうかな、でも……」
「いらない!
そんなもの手に入れたところで、苦しみは終わらない。楽になんてなれない。」
煮え切らない私に業を煮やしたのか、彼は激しく捲し立てた。
それは、私に投げられていて、同時にどこか遠くに投げられているかのようだった。
「……そうだね。きっとそうだ。
でも……、そうだ、少し私の話を聞いてくれないか?」
「……はい。」
彼の返答を聞いて、ポツポツと私は話し始めた。
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