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「リリィ」
レオ様から声をかけられて側に行く。
レオ様は私に微笑みかけた。
「相変わらず君は何を着ても可愛い」
「そ、そんな嬉しい事を言ってくれたとしても何も出ませんよ?」
「いいよ。ただ俺の側にいてくれれば」
手を握られて赤くなる。
前世でも、この世界に来てからもずっとレオ様は私の一番だ。
だからこそ、レオ様にも私が一番だって思ってもらいたい。
欲張りな性格になってしまったようだ。
「そういえば、カレンとダンテが付き合い始めたって聞いた?」
「カレンから聞きました。ダンテに告白されて嬉しくて死にそうだと」
「あはは。ダンテもずっとカレンの事好きだったから」
「カレンは可愛いですし、世の男性が放っておくわけありません」
「そうだね。俺にリリィがいなかったら俺もカレンを好きになっていたかもしれない」
それがゲームでの世界なんですよ、とは言えない。
その世界を知っているのは私だけ。
「俺、リリィに出会えて本当に良かったって思うんだ」
「え?」
突然そう言われて驚く。
レオ様は微笑むと私の手を引いて会場を出た。
庭園のベンチに腰掛けるとレオ様は私の手を握ったまま話し出した。
「俺、本当に自分の容姿が嫌いで、周りの言葉も気持ち悪くて。いつも逃げたくて仕方なくて、自分の気持ちを押し殺して生きてた。婚約者を選んでいいって父に言われた時も、適当でいいって投げやりで。もういっそ、感情なんてもの捨てて人形みたいに生きれたらいいのにって思いながら適当に選んだリリィの家に行ったんだ」
それは知ってる。
適当に選ばれた婚約者、それが悪役令嬢のリリィ・バイオレットだった。
でも、ゲームでの世界のリリィはレオ様を本当に好きだったと思うし、私だってレオ様を好きだ。
彼を人形みたいにした周りの事を私は許せなかったし、ゲームのリリィがレオ様に何もしてあげなかったのが凄く憎かった。
あの日、レオ様がバイオレット家に来た日に転生して良かったって今なら思える。
「最初に会った君は周りの事なんて気にせずにわがまま放題で、こんな子と婚約者として接しないといけないのかって嫌な気持ちになったけど」
転生前のリリィ、何をしたんだ。
「それが突然、人が変わったように性格が変わって。突然『死にたい』と言い出すようになるし、意地でも死のうとするし。あまりの情緒不安定さに恐怖を感じた」
それは本当に悪かったと思ってます。
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