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「だけど、リリィが俺を認めてくれた」
「認めた?」
「俺を『綺麗だ』と言ってくれた。気持ち悪いと言われてきた俺をリリィは何の迷いもなくはっきりと俺の目を見て『綺麗だ』って。周りの言葉に耳を傾けなくてもいい、俺の容姿に嫉妬した奴らの言葉なんて聞く必要ないって、リリィが俺に教えてくれた。確かに俺はその場に存在しているんだと、リリィは教えてくれた」
特別な事は何も言ってない。
私はただ、思った事を口にしただけにすぎない。
ただ自分の推しで、苦しむ姿を見たくなくて。
自然と思った自分の感情をレオ様に伝えただけ。
「まさか、そんな本気で『欲しい』って思った子に婚約の申し出を断られるなんて思ってなかったけど」
「うぐっ!!」
「でもまぁ、結果俺の婚約者になってくれたし、謎の『死にたい欲』も無くなってホッとしてる。俺の事好きになってくれたみたいだし」
ニコッと笑われて赤くなる。
私はレオ様から顔を逸らした。
「リリィは本当に不思議だ。オリバーも懐いて、マリアを助け、ダンテやテレサとも友達になってしまった。挙句の果てにアリアを助け出して自分のメイドにしてしまうし。殺し屋3人手懐けるって、何をしたら殺し屋と仲良くなれるんだ」
「知りませんよ。私が欲しいと思ったのはレーラだけです。ルーカスやフレディは単に私を面白がってるだけですから」
「あの二人は性格が少し変わってるから」
少しどころではない気がする。
結局財政大臣はルーカスが全部吐かせたあとに殺しちゃうし、フレディに関しては残党狩りを楽しんでる。
毎日のように血まみれで私に報告しに来るの何なの。
私が『やれ』って言ってるみたいじゃないか。
「皆、リリィが好きだよ。リリィに感謝して、リリィが幸せになれるように、リリィに恩返しが出来るように考えてる。だからリリィ。君が俺の世界を変えてくれた事に感謝する」
「レオ様……」
「俺は絶対にリリィを幸せにする。悲しませない、二度と『死にたい』なんて思わせない。だから、もう一度言うよ。……俺と結婚してくれないか」
自分のやりたい事のために周りを利用して、殺されたくないから助けろとか、自分を殺して欲しいから周りの事を使うとか、そういったわがままなのはリリィの本質なのかもしれない。
そのわがままがレオ様を、皆を救ったというのなら……。
「リリィがわがままな悪役令嬢で良かった」
「え?」
「なんでもありませんよ。もちろんです、レオ様。私以外と結婚するなんて許しませんから」
そう言うとレオ様が嬉しそうに私を抱き締めた。
この人が好き。
この人が幸せになれるなら、私は悪役令嬢でいい。
そう思いながら私はレオ様の背中に腕を回した。
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