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あり得ない……。
私は自分の姿を噴水で見て頭を抱えた。
これからは辛い思いも、悲しい思いも、痛い思いもしなくていいと思っていたのに。
「私が自殺した意味!!」
そう叫ぶとメイドが走ってきた。
「お嬢様!?どうされましたか!?」
「死にたい……」
「お嬢様!?」
噴水にうなだれて撃沈する。
前世で酷いいじめに遭っていた私は、そんな人生を終わらせたくて自殺した。
もう生きていたくなくて。
もうしんどい思いをしたくなくて。
それなのに、気が付くと私の体は縮んでいて、前世とは明らかに違う世界に来ていて。
神様が本当にいるのなら問いたい。
どうして私に『転生』をしたのか。
それにこの世界、見覚えがあるのだ。
死ぬ前までやっていた大好きな乙女ゲームの世界、『エンゲージ・フラワー』。
お金持ちが集う名門校であるフラワースクールに、平民である主人公が入学して王子達と恋愛をするシンデレラストーリーだ。
招待状が届いた者しか入れないその学校に、平民が来ることは初めて。
当然主人公をいじめの対象にされる。
よく自分と重ねて見て、主人公を応援してたなぁ。
推しであるこの国の王子、レオ・ローズ様との物語は何度もプレイした。
イケメンだし、いつだって主人公を守ってくれる。
そんな推しの婚約者である悪役令嬢に主人公は何度も酷い扱いを受けていた。
その、悪役令嬢が、今の、私だ。
意味わからん!!!!
確かにこの世界は好きだ。
でも、この悪役令嬢は嫌いだ!!
今すぐに消えたい、死にたい。
リリィ・バイオレットは公爵令嬢だ。
意地悪で、上からで、王子に媚びへつらって。
私をいじめてた人達と同じだった。
そんなやな奴に転生したとか、信じたくない。
しかも、見たところ私は8歳くらい。
ゲームは学校に入学するところから始まる。
つまりだ、まだこの世界ではゲームすら始まっていない。
……ん?
まてよ?
始まっていない?
それって……。
「リリィ・バイオレットが今この場からいなくなればゲームの世界で登場しなくなるのでは!?」
目を輝かせて顔を上げる。
そうだ!!
私がこの世界から消えればゲームで主人公がいじめられる事はない。
平和でハッピーな展開。
それだ!!
私は走って家である豪邸に入った。
この体なら、二階の窓から飛び降りれば確実に助からない。
そうと決まれば……。
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