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私の家には古くからの言い伝えがある。
15歳の誕生日を迎えた者は、虹がかかっている間だけ、
外の世界と繋がることができる。
そして、今日、待ちわびていた虹がようやくかかった。
水面に映し出された光のアーチは、ゆらゆら輝いて
私を歓迎してくれているよう。
そんな期待は、陸に上がってから、すぐに打ち砕かれた。
気が付くと、私は手足を縛られ、地面の上に転がされていた。
私を取り囲んでいたのは、「ショウガクセイ」と呼ばれる小さな人間たち。
逃げようと身をよじったけど、縛られた手足では思うように動けない。
奴らの手にはペットボトルに入った橙色の液体。
そうあれは確か…「果汁100%のオレンジジュース」!
「これを頭にかけたら、どうなるかな?」
恐怖で思わず目をつぶった、その時。
強い風と共に現れたのは、とても長くて大きなアレの男性だった。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言いたかったけど、うまく言葉にならない。
初めて見た太くて大きなアレに、私の目はくぎ付けだったから。
私の視線の先に気づいた彼は顔を赤らめながら、器用に手足の紐を解く。
そして、私をそっと抱き上げ、沼のほとりまで送ってくれたのだった。
さっきまであんなに輝いていた光のアーチは、
もう、空に溶けて消えてしまいそう。
「帰らなきゃ!」私は挨拶もそこそこに慌てて沼に飛び込んだ。
高鳴る鼓動を胸に抱えたまま、
私は振り返ることもせず、沼の奥底まで一気に潜った。
昔、おばあさまに教えてもらった「ニンギョヒメ」の物語。
地上の王子様に恋したニンギョヒメは、そのあと、どうなったんだっけ?
私にあるのは魚のしっぽではなく、甲羅と、水かきと、頭のお皿。
この先一体、どれだけ契約すればいいんだろう。
ううん、それよりも大事なのは、とても立派なアレを持っている…
私の王子様に、また会えるかどうか、ってこと。
そう、体の中心にある…大きくて長い…アレは人間の言葉でなんて言った?
えーと…そう、鼻!
あの方はとても長くて立派な、赤い鼻が印象的な方だった。
あぁ、いつかまた、あなたの世界へ行くわ。
あなたと結ばれる日を夢見て。
Part Of Your World 河童と天狗の物語
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