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俺は取り敢えず、創作研究会の部室に彼女を運んだ。今日は部活が休みの日だし、テスト期間も近いので誰かが部室に来る心配もない。そして、部室には会長がポケットマネーで購入した大きなソファーがあった。毛布もあったし、あのソファーでなら、ゆっくり月白を寝かせられるだろう。
そう考え、俺は月白を抱えながら学生課に部室の鍵を取りに行き、部室を開けてソファーに月白を寝かせて毛布を掛け、生協の売店で頭痛薬と冷却シートとペットボトルの水を購入し、大急ぎでまた部室へと戻る。ゼェゼェと息を切らし、部室の扉を開けると、既に月白は目覚めていた。
「あ、黒岩君。君が此処まで運んでくれたんだ。ありがとね」
元気そうに取り繕ってはいるが、まだ顔が赤い。俺は先程、買ってきた品々を月白に渡す。
「ほら、薬、買ってきたからさ。水と冷却シートも。もう少し寝てなよ」
「ありがとう! 何だか申し訳ないなぁ……」
月白は口の中に薬を入れ、水で流し込み、冷却シートを額に貼った。そして、もう一度、ソファーの上に寝転がった。
「凄い倒れ方したけど、大丈夫なの?」
「……ん、平気。よくある事だから」
俺の問いに彼女は澄まし顔で答える。だが、その言葉に俺は驚愕した。
「え? よくある事って……。何かの病気なの? 発作が起こりやすい病気とか? それって大丈夫なのか?」
不安げな表情を浮かべる俺に対し、彼女は微笑んだ。
「……そういえば、さっき、食堂で私に聞いてきたよね? 『何であんなに良い作品を書けるんだ?』って」
唐突な話題の転換に俺は戸惑う。
「そ、そうだけど……。何で、今、その話を」
「いいよ。話してあげる」
彼女が言葉を発した瞬間、部室内の時間が止まったような気がした。彼女の顔に先程までの微笑みは無く、真剣な表情になっていた。
「私は皆からこう思われてるんじゃないかな。『あんなに独特な世界観を創り出せるなんて凄い』って。でも、違う。私は世界を創り出してなんかいない。あの世界をこの目で実際に見てるんだよ。それは特別な技術とかじゃなくて、ただの呪いなんだよ。だから、君が私の話を聞いても得る物は何も無いと思うよ」
そう前置きし、彼女は少しずつ話し始めた。
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