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昔々「ゴブリンばあさん」と呼ばれる、醜くて小汚い老婆が寂れた村で暮らしていた。鼻は大きくイボだらけで、まぶたは垂れ下がっていて目が開いているのかわからない。腰も曲がっていて君が悪かったため、村人たちは老婆を怖がって近づかなかった。
そんな老婆も若い頃は美しく、一人の男性と結婚していた。しかし病気で早くして夫を失った。悲しみは深かったが、友人の魔女がよく遊びに来てくれたので今では楽しく暮らすことができた。
ある日、老婆が畑仕事をしていると、魔女がやって来た。魔女は美しい黒髪をたなびかせて、老婆に町で買った焼き立てのパンを見せた。
「やあ、畑仕事は順調かな?」
「ええ、とてもよく育っているわ」
「それはよかった。これはお土産だよ。店主からたくさんオマケをしてもらってね、これならしばらく食べ物には困らないだろう?」
「ありがとう、あなたがくれるパンはとても美味しいから嬉しいわ」
魔女は畑を見渡した。熟れた野菜がいくつかなっている。それから、老婆を。日に焼けた肌はとろりと垂れ下がっていて、どこが目でどこが顎なのかわからない。
魔女は杖を出すと老婆に向けて振った。老婆は太陽のような金髪がよく似合う、若くて美しい少女になった。
「畑仕事の何がいいかわからないけどさ、やめた方がいいよ。あんたはこんなに美しいのに、畑仕事のせいで肌は日に焼けてシワだらけになるし、ずっと下を向くから腰が曲がっちまうじゃないか」
美しい少女は怒った。
「私の肌はね、私がたくさんお日様と挨拶した証拠。それに腰はね、私がたくさん外に出て野菜たちと触れあった証なの。だから私は年を取った自分を醜いと思わないわ。戻してちょうだい」
「ふぅん、でもあたしは白くて滑らかな若い娘の肌がいいけどねぇ」
魔女は渋々、少女を老婆の姿に戻した。化け物のような姿に、老婆は満足そうに頷く。
「私はこの姿の自分を愛しているのよ」
老婆の醜い姿に「そうか」と言うと、魔女は老婆が少しでも楽になるようにと、魔法を使って雑草取りと水撒きを手伝った。老婆はお礼を言って、魔女を夕食に誘った。老婆が作った野菜はどれも甘く、優しい味がした。
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