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篠突く雨
※この章は、痛い表現が多くなります。
ご注意ください。
【樹side】
『樹?大丈夫?ちゃんと食べてる?』
大好きな
彩音くんの声
「大丈夫だって。それより、どうだった?」
なのに、それを聞いても心の中は黒い雲が立ち込めたまま。
『一位、取ったよ!』
彩音くんの声は、ヒドく弾んでいて。
そんなに興奮してる声を、初めて聞いた。
「ほんとに…?良かった…!おめでとう…ほんと、良かったっ…」
ああ…
これで…
『なに?泣いてんの?大袈裟だなぁ…絶対一位取るって言ったじゃん』
「うん…信じてた…信じてたよ…」
『ふふっ、泣き虫…。でも、樹がそんな喜んでくれて、俺も嬉しいよ。あーもう、今すぐに飛んでって樹を抱き締めたいっ!でもこれからセレモニーがあってさ…それ終わったら、すぐに飛行機乗るよ。だから、待ってて』
これでようやく…
「うん…待ってる…ぁっ…」
『…樹…?どうかした?』
「なん、でもない…気を付けて、帰ってきてね…」
『うん。あ、呼ばれてるから切るね。愛してるよ』
ブツッと通話が切れて。
無機質な機械音が聞こえてきた。
「へぇ…愛してる、とか言うんだ。意外だね。絶対に彩音はそういうこと言わないと思ってたのに。やっぱり本当に好きな人には違うんだな」
携帯をあてているのと反対の耳元で、柏崎くんがククッと笑う。
そうして、首筋に舌を這わせながら、するりと下着の中に手を入れて俺の中心を掴んだ。
「んあっ…」
俺は、携帯を耳に当てたまま、手を離した。
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