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遣らずの雨
【樹side】
雨はもう3日間も降り続いていて。
雨はキライじゃないけど、さすがにいつになったら晴れるんだろう…なんて、窓の外を眺めながらぼんやりと考えていた。
「…俺さ、君のことが好きなんだ」
突然の言葉に、俺はゆっくりと正面に顔を戻した。
目の前にあるのは、学内でイヤと言うほど見かけ、テレビでも何度か見たことのある切れ長の瞳の、恐ろしく顔の整った男。
「………え………?」
好き?
俺のことが、好き…?
言葉が頭の中で処理できなくて、何度も何度も反芻してみる。
ちょっと待って
好きって、なに?
好きって、誰のことを?
だって…
俺もあんたも
オトコじゃん
「ふっ……そんなに驚かなくても」
言った張本人のその男は、俺の態度に動じることもなく、面白そうに微笑んでて。
その余裕綽々な表情に、なんだかちょっとモヤッとした。
なんで、そんなに余裕ぶちかましてんの?
「…俺、男だけど?」
混乱する思考の中、ようやくそれだけを言うことができたけど。
「そうだね。かわいい顔してるなとは思うけど、さすがに女の子には見えないかな」
そいつは、益々笑みを深めて俺を見つめてる。
「俺は男で、あんたも男だろ?男同士で、好きってさ…」
「あれ?樹くんは、そういうのに偏見があるタイプなの?」
今まで楽しそうにしていたのに、スッと笑顔を引っ込めて、訝しそうに目を細めた。
黒翡翠のような瞳の奥が
キラリと煌めいた
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