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「べ、別に…そりゃ、恋愛は、個人の、自由…だけど…」
その迫力に、思わずしどろもどろで答える。
別にさ。
男が男を好きなんてありえない、なんて言うつもりはない。
世の中、そういう人が結構いることぐらい、俺だって知ってる。
高校んときの友だちにだって、一人いたし。
でも、それはあくまでも他人の話であって。
自分に降りかかるとなると、話は別だ。
「知ってるよ。一昨日、彼女に振られたんでしょ?」
「はっ!?」
唐突にそう言われて。
びっくりして腰を浮かせてしまった俺を見た男は、ぷーっと派手に吹き出した。
「友だちに聞いたよ」
ククッと嘲るような笑い声を立てながら、面白そうに肩を揺らす。
「友だちって…あんたの周りにうじゃうじゃいる、あの女…の子たちのこと?」
その態度にさらにモヤッとしながら睨んでやったけど。
目の前の男は、そんなの気にもならないみたいな顔で、目を細めた。
「あ、知ってるんだ。嬉しいな。俺のこと、見ててくれたんだね?」
「いや、別に見てるってわけじゃないし…」
あれだけ、周りにいっつも女が群がってれば、イヤでも目につくし。
っていうか、あんた、うちの大学でもとびきりの有名人だし!
「…でもさ、あんな女、振られて正解だよ。だって、俺の友だちが声かけたら、すぐにホテルについてきたしね」
「はぁっ!?」
俺は今度こそ、椅子を蹴っ飛ばして立ち上がった。
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