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「アヤト!元気にしてたかい?」
ニューヨーク、マンハッタンのバー。
指定されたその店へ入ると、テオは先に来ていて、もうウイスキーを飲んでいた。
「久しぶり。テオも元気そうだ」
一年半ぶりに会ったが、ちっとも変わっていない。
そのことが、無性に嬉しかった。
「調子はどう?公演は明後日だろう?」
「ああ。いいよ。せっかくニューヨークにいるなら、聞きに来てくれればよかったのに」
「明日には、フランスに戻らないといけないんだよ。残念だ」
テオと同じものを頼んで、グラスを合わせて再会に乾杯し。
俺たちは近況を報告しあった。
「…サトシは、元気だよ?心配しなくていい」
話が途切れたタイミングで、テオが静かに言う。
「そっか…ありがとう」
慧はあのあとオランダへ戻り、テオの事務所所属のピアニストのマネージャーをやっているらしかった。
「アヤトの方は?ナカヤサンからいろいろ聞いてはいるけど…大丈夫なのかい?」
「ああ、うん…なんとか落ち着いたよ」
「すまなかったね。アヤトが大変なときに、傍にいてやれなくて」
「そんなの気にしなくていいよ。俺が…情けないだけだから…」
「…タツキは?記憶はまだ、戻っていないの?」
「うん…まだ…」
「そうか…」
テオは慰めるように、肩を叩いてきて。
俺は小さく笑顔を浮かべた。
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