光風

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テオに断りの連絡を入れよう。 その日、狂ったように何度も俺を求める樹を抱きながら、そう決意したのに。 結局、何日経ってもテオへと繋がるボタンを押すことが出来なかった。 わかってる。 本当はあっちに戻りたいんだ、俺は。 だったら、樹についてきて欲しいって、そう言わなきゃならないのに。 それも出来ない。 『ただ側にいて、彩音くんが振り向いてくれるのをじっと待ってろって?そんなの冗談じゃない。俺は、彩音くんのペットじゃないよ』 まだ記憶をなくす前の、樹の言葉が痼のように俺の中に留まっていて。 せっかく仕事を再開して、ようやく樹は樹自身の未来へ向かって歩み始めたのに、それを邪魔するなんて、出来なかった。 どうするにしろ、テオに連絡しなければ向こうだって困るのに、なにも決められない。 深いため息をつくしかない。 「…彩音、老けたね…」 茶化すように、冬也が笑いを含んだ声で言った。 「うるせー。放っとけ」 「なになに?悩み事〜?俺でよければ、相談に乗るよ〜?最近、早漏気味とか〜?」 陽なんか、明らかに笑いながら見てる。 「んなわけねーだろ。バカかおまえ」 「バカってヒドいっ!」 「そんなことより冬也、話ってなんだよ?」
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