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茶化す陽を押し退けて、冬也に話を振る。
そもそも今日は、冬也に呼び出されてここへきたんだった。
「あーうん、あのさ…最近、樹どうしてる?」
「どうって?元気だけど?」
「なになに?みっちー、またなんかあるの?」
陽は、俺と冬也の顔を交互に見て、不思議そうに首を傾げてる。
どうやら陽も話の内容は知らないらしい。
「なんかって…別に、変わったところはない、と、思う…けど…」
語尾が小さくなってしまうのは、最近自分のことばっかりで、樹のことをちゃんと見ていた自信がないからで。
そんな俺に気付いてんのか、冬也はビールを口に運びながら鋭い視線を投げてくる。
「…樹、なにかに悩んでるみたいだよ。真琴が、そう言ってた。俺にはよくわかんなかったけど…なんか思い当たる節ないの?」
「…え…?」
樹が、悩んでる?
そんな素振り、俺の前では一度も…
「実はさ、今日は真琴が樹を呼び出してて。話聞いてみるから、彩音になにか知らないか聞いてこいって言われてるんだよ」
「…真琴の尻に敷かれてるんだね、冬也…」
憐れみの声でぼそっと言った陽の頭を、冬也が殴った。
「いてっ!なにすんだよ〜」
「うるさいよ!おまえだって、風間くんの尻に敷かれてるんじゃないの?」
「そんなことないよ〜。雄志、優しいもん!俺の言うこと、なんでも聞いてくれるし〜」
「おまえが敷いてんのかよっ!」
言い合う二人を横目に、俺は最近の樹の様子を思い出していた。
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