光風

25/45
前へ
/839ページ
次へ
茶化す陽を押し退けて、冬也に話を振る。 そもそも今日は、冬也に呼び出されてここへきたんだった。 「あーうん、あのさ…最近、樹どうしてる?」 「どうって?元気だけど?」 「なになに?みっちー、またなんかあるの?」 陽は、俺と冬也の顔を交互に見て、不思議そうに首を傾げてる。 どうやら陽も話の内容は知らないらしい。 「なんかって…別に、変わったところはない、と、思う…けど…」 語尾が小さくなってしまうのは、最近自分のことばっかりで、樹のことをちゃんと見ていた自信がないからで。 そんな俺に気付いてんのか、冬也はビールを口に運びながら鋭い視線を投げてくる。 「…樹、なにかに悩んでるみたいだよ。真琴が、そう言ってた。俺にはよくわかんなかったけど…なんか思い当たる節ないの?」 「…え…?」 樹が、悩んでる? そんな素振り、俺の前では一度も… 「実はさ、今日は真琴が樹を呼び出してて。話聞いてみるから、彩音になにか知らないか聞いてこいって言われてるんだよ」 「…真琴の尻に敷かれてるんだね、冬也…」 憐れみの声でぼそっと言った陽の頭を、冬也が殴った。 「いてっ!なにすんだよ〜」 「うるさいよ!おまえだって、風間くんの尻に敷かれてるんじゃないの?」 「そんなことないよ〜。雄志、優しいもん!俺の言うこと、なんでも聞いてくれるし〜」 「おまえが敷いてんのかよっ!」 言い合う二人を横目に、俺は最近の樹の様子を思い出していた。
/839ページ

最初のコメントを投稿しよう!

548人が本棚に入れています
本棚に追加