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「そんなの…樹と話し合うしかないじゃん」
俺があんなに悩んでたこと、陽はあっさりと一蹴した。
「そうだけど…それが出来れば、悩んでねぇよ」
「悩む必要がどこにあんのさ?樹と話し合って、二人で決める、それしかないっしょ」
「そうだけど…」
「彩音の悪いところだね。頭でばっかり考えて、動けなくなる」
「…悪かったな、頭でっかちで」
「その時の樹はそうだったかもしれないけど、今の樹がどう思ってるかなんて、そんなの樹にしかわかんないだろ?それを聞かないうちから悩んだって、仕方ないと思うけど?」
冬也の言葉に、陽が首がもげそうなほど、ぶんぶん首を振って頷いて。
「たまには、当たって砕けろだよ!彩音っ!」
「いや、砕けちゃだめだろ…」
「んもうっ!いちいち突っ込むなよ〜!それはあれじゃん!えっと、言葉の…」
「言葉のあや?」
「そうそう、それそれ!とにかく、帰ったら話しなよ?わかった?」
「あー…うん…」
陽の勢いに押されて、思わず頷いてしまった。
「今、樹は彩音の傍にいて、ちゃんと話が出来る。それがなによりも一番大切だってこと、わかってるだろ?」
冬也の言葉は、とてもとても重くて。
そうだよな…
話が出来るんだから
ちゃんと向き合えばいい
あのオランダの空の下
あなたのことを思いながら
空の向こうの遙か遠い日本へと思いを馳せるだけだった日々
あんな思いは
二度としたくない
「…わかったよ。ありがとう、2人とも」
素直に礼を言うと、陽と冬也は笑って肩を叩いてくれた。
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