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「ニューヨークから帰ってきてから、様子が変だったでしょ?だから、なんか悩んでることがあるならいつか話してくれるのかなって思ってたのに、全然話してくれないからさ…気になって我慢できなくて、中谷さんに聞いちゃったんだ」
種明かしをするみたいな口調で、樹が話す。
「そんなに、変だった?」
「変だったよ。自覚なかったの?落ち着きなく部屋をうろうろしたり。かと思ったら、考え込むようにピアノの前で眉間に皺寄せてたり。俺の顔見て、溜め息吐いたり…。いくら俺が鈍くたって、流石に気づくでしょ?」
思い出したのか、面白そうにふふっと笑った。
なんか…
恥ずかしい
そんなにバレバレだったとは…
「ごめんね?勝手に中谷さんに聞いちゃって。でも、どうしても気になってさ…もしかして、俺のこと嫌になっちゃったのかもって…不安になっちゃったりして…」
「そんなこと、あるわけないじゃんっ!」
だけど、急に眉を下げて悲しそうな顔をするから。
大慌てで否定する。
「うん…わかってる、ごめん」
「いや、樹が謝ることじゃないよ。俺が、なかなか言い出せなくて、不安にさせたんだし…」
「ううん、やっぱり謝んなきゃ。俺も、隠してることあるし」
「えっ?」
隠してることって…なに?
「実は、ね」
急に真顔になるから。
俺は思わずゴクリと唾を飲んだ。
「…俺も、フランスで仕事すんの」
「……………へっ?」
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