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次の日の放課後、あの路地裏のドアの前で待ち伏せしていると、男がやってきた。巧の姿を認めると、おっ、と声を上げた。
「なんやまた来たんかいな」
「おじさんのこと、気になる」
巧は男の三白眼を真っ直ぐ見据えて言った。
男はふうんと言って、面白そうに巧を眺めている。
「小僧、名前は?」
「知らない人に名前を教えちゃいけないと言われているので」
男は喉の奥で高い音を出して笑った。
「そらその方がええわ」
男はドアの前を通り抜け、路地をずんずん進んで行った。そして一度立ち止まると振り返ってにかっと笑った。
「俺は梧桐。今からすぐそこの喫茶店行くわ。暇やったらお前も来たらわ?」
そして巧の返事をまたずに歩いて行ってしまう。
知らない人にはついて行ってはいけない。
ということはわかっているが、すぐそこの喫茶店なら他の人の目もあるから大丈夫だろう、と判断して巧は梧桐について行くことにした。
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