1 小さいころ

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「これあげる」  園庭の片隅。先生に叱られ泣いていたぼくに、みぞれが一つのカタマリを渡してきた。  砂で作られたまんまるの泥だんご。 「これ、しゅうに作ったの。食べたら元気になるよ」  にっこり笑うみぞれにぼくはフイッと横をむいた。 「……元気になんかなれない」 「そんなことないよぉ。このだんごは特別なんだよ? 食べたらすぐに元気になれる魔法のだんごなんだから! はいっ、食べてみて」   ずいっと押しつけられる泥だんごを仕方なく受け取って、パクパク食べるマネをする。  こんなので、ほんとに元気が出るわけないよ。  心の底でそう思ったけど、みぞれのうれしそうな顔を見たら言えなくなった。 「みぞれはしゅうのことがだいじだよ。ずっといっしょにいようね」  そう言って、みぞれはぼくの手をぎゅっとにぎってきた。  陽の光にみぞれの真っ黒な瞳が宝石みたいにきらっと光る。 「行こう! 砂場で元気になるだんご、もっと作ろう」  みぞれにぐいっと手を引っ張られ、一緒に砂場へかけていった。
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