7人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
1 小さいころ
「これあげる」
園庭の片隅。先生に叱られ泣いていたぼくに、みぞれが一つのカタマリを渡してきた。
砂で作られたまんまるの泥だんご。
「これ、しゅうに作ったの。食べたら元気になるよ」
にっこり笑うみぞれにぼくはフイッと横をむいた。
「……元気になんかなれない」
「そんなことないよぉ。このだんごは特別なんだよ? 食べたらすぐに元気になれる魔法のだんごなんだから! はいっ、食べてみて」
ずいっと押しつけられる泥だんごを仕方なく受け取って、パクパク食べるマネをする。
こんなので、ほんとに元気が出るわけないよ。
心の底でそう思ったけど、みぞれのうれしそうな顔を見たら言えなくなった。
「みぞれはしゅうのことがだいじだよ。ずっといっしょにいようね」
そう言って、みぞれはぼくの手をぎゅっとにぎってきた。
陽の光にみぞれの真っ黒な瞳が宝石みたいにきらっと光る。
「行こう! 砂場で元気になるだんご、もっと作ろう」
みぞれにぐいっと手を引っ張られ、一緒に砂場へかけていった。
最初のコメントを投稿しよう!