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発表と高山悟
年末は東京に帰る準備をして、荷物を実家に送った。
百合花さんは新幹線の駅まで見送りに来てくれた。
「やっと戻れるのね。お疲れ様でした。」
「百合花さんは2月には来てくれるんだよね。新居は社長がって言われてたけど…。」
「うん。父が住んでいたマンションが空くの。そこに住んでも良いって。高山さんが良ければ…家賃は半値にしてくれるって。」
社長が住んでいたマンションは奥様と二人だからと手狭な感じではあったが、セキュリティはしっかりとした便利な場所にある高級マンションだった。
「あんな豪華な場所、いいのかな。でも百合花さんと暮らすのだから、百合花さんには慣れ親しんだ家が一番だよね。」
僕は構わないよ、と答えて、百合花が困った顔を見せた。
「百合花さん?」
様子がおかしいと思い、彼女の手を取る。
「あのね?まだ言えないんだけど、私…東京には行けない。」
「えっ?どういう事?」
「結婚は延期、まだ式場も決めてないし、良いと思うの。高山さんも東京に戻って暫くは忙しいと思うし…。」
「え、延期!……いや、まぁ、延期でもいいけど、どうして?結婚して東京に来てくれるよね?だって僕…真部食品で頑張って……。」
いつか社長に、その言葉を飲み込んだ。
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