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「朱莉?どうかした?」
ボーッとしていて、百合花に声を掛けられて我に返った。
「あ、ごめん。高山悟さんだよね?意外だったから驚いちゃって…。伯父さん、と…社長への報告内容についてはいくら社長令嬢の百合花といえど言えません。これは業務だから。私の報告内容が聞きたいなら直接、伯父さんに聞いて?ごめんね?個人的に会社での話をするなら、一年後には親会社に戻る予定だったと思う。遠距離恋愛になるのかな。それと…確か付き合っている人、いたと思うけど…そこは聞いた?」
「あ、うん。ちゃんと別れたって。私に交際を申し込む前に。そこは確認した。彼女いるっていう話は私も聞いてたから、噂で。」
「そっか。会社では真面目に仕事してるし、それなりに優秀みたいだよ?人間関係で問題もおこしてないし、取引先に受けもいいみたい。でもさ、そういう事を聞くって事は百合花の中ではもう決まってるんでしょ?」
訊き返すと、恥ずかしそうに百合花は頷いた。
今まで百合花は自分の目で見極めてお付き合いを断り、デートを重ねていた。
ここで聞くという事は彼女の中の最後の一押しが欲しかったのだろうと、朱莉は考えて、彩音には言えないと頭を過るが、もう知っているのかもしれないとも思えた。
「ねぇ、彩音はこの事知ってる?」
「彩音。ううん、時間が合わないから最近、顔を見るだけで話す暇がないし、まだ話してない。彩音、彼氏とデート忙しいみたいだし…。」
「彼氏とデート?」
思いっきり大きな声が出て口を手で塞いだ。
「どうしたの?朱莉。彩音だってデートするでしょ?」
ふふっと笑い、百合花は自分の部屋に戻った。
(何?二股?書いてやろうか、報告書にお嬢さんは二股されてますよって!!)
怒りが込み上げたが、それから暫くして部屋に缶チューハイを大量に持ち込み、休み前のリビングで飲んでいる彩音がいて、話を聞くと彼と別れたと言われた。
(百合花には別れてからお付き合いを申し込んだと言ってたけど、彩音の話と合わせるとお付き合いを申し込んでオッケーをもらってから、少ししてから彩音に別れ話をしてるね。万が一の為に彩音はキープされてたって事かな?二股を立証するのが難しい微妙な期間。時間が合わなくて会えなかったから、直接話したかったから、とでも言えばいい話よね。結構、計算高い人なのかも…。)
そんな風に彩音に付き合いながら朱莉は思っていた。
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