友人と従姉妹

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「ツマミがない!何か作るね。」 「あ、いいよ。私が。」 「私の方が早いでしょ?」 クスクス笑いながら、台所に立った彩音は別れたという割に明るかった。 父親が代々の大きな農家で、今は株式化されて「えむファーム」と名付けられている田舎で育った彩音は、小さな頃から山や川を遊び場として採れたての野菜を調理する事にも慣れていて料理上手。 朱莉も普通に料理はするけど、ちょいちょいと時間を掛けずに作る彩音には敵わないと思っていて、素直にお願いしていた。 間もなく、美味しそうなツマミが出て来る。 「うわ!!美味しい!!なにこれ!」 「山芋を五ミリ程度に輪切りにしてね、表面を焼いて、その上にハムを乗せてチーズを乗せて焼いたのと、肉味噌を乗ってけて焼いたの。」 焼いただけというけど、ハムチーズも肉味噌乗せも香ばしくてトロっとして、濃厚でお酒が進んだ。 「うちのお父さん、お酒好きでしょ?農場の人とか近所の人を呼んでは宴会だからこういう料理は得意なのよね。これ5分で出来るから。」 肉味噌は普段から作り置きしていて、チャーハンに入れたり、素麺に載せたり活躍している便利な常備菜で、これも作り置きしてくれるのは彩音だった。 「彩音さ、大丈夫?別れたって理由聞いてもいい?」 「いいけど…社長に報告しないでよ?個人的な事なんだし。」 「分かってるけど、気にする事ないでしょ?」 「私の所為で仕事に支障があったら後味悪いもん。それに、あんまりダメージがないのがダメージというか…。」 彩音はそういうと缶チューハイをクイっと飲んだ。 「好きな人が出来たから別れてくれって言われたの。最初は二か月で!!って正直信じられないと思った。向こうから言い寄って来たし……でも気持ちは変わるし仕方ないのかなって。ちゃんと話してくれただけ誠意はあったのかなって。付き合ってても意味ないし傷が浅くて良かったと思おうと…。簡単に割り切れた自分にショックだったかなぁ。私、本当に好きだったのかなぁって。これはこの先も危ないぞって反省してたとこ。」 言われてなるほど、と朱莉は納得していた。
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