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直後、リリィは胸を強く押さえてしゃがみこんだ。心臓を鷲掴みにされたような痛みにいやな汗を感じる。全身で鼓動が脈打った。
「リリィ!」
美夜が飛びついて背中をさすった。リリィは背中に暖かい感触を覚えながら、完成させたマシンを前にして美夜たちが未来へ飛ばずじりじりとしている理由を悟ったのだった。
「私のせいなのね」
背中をさする手が止まった。リリィはもう片方の手を強く取りながら、天才の武装が剥がれ壊れそうな少女に戻った美夜の顔を見つめた。
美夜の黒い瞳は、戦火のない真っ暗な夜のようだ。
「私の身体ではマシンに乗れない。そうでしょ?」
「……そうだ」
美夜は白状するほかなかった。だが表情は先ほどと打って変わって、難題にぶちあたったという事実を淡々と述べる科学者の顔つきだった。
「理論上だと、きみの身体は時空を超えるには耐えられない」
美夜は胸のペンダントを握りしめた。
「だけど、わたしは時空だってこの手でねじ曲げた。きみの身体が時間転移に耐えうる手段を見つけ出す。……必ず!」
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