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「あのときはゴタゴタしていたけど、美夜は確かに、迎えに行けなかったときのための代わりの合流方法を私に教えてくれたんだもの」
もやがかった記憶を探るため、リリィは両手でこめかみを押さえた。懐中電灯は電気をつけたまま、胸に抱えこむ。
「くうん?」
ヴォルフがリリィを見上げる。
「『その水晶には秘密があるんだ』……」
──君を導く標なんだよ──
「この世界の、どの時代、どこにいても」
──どこにいても一目でわたしたちの居場所が印がわかるようにね。
その時だった。
「わん!」とヴォルフがひと鳴きして、リリィは目を開けた。
胸元が光っていた。
「水晶が……」
胸元のペンダントは懐中電灯の光を受け、光が拡散のプリズムから、一本の光に収斂した。
リリィは猛然と立ち上がり、膝の上のヴォルフは地面に飛び降りた。
まさしく、標だ。
「うわん?」
「この光を追いましょ。さあ、行きましょう」
「わん」
ヴォルフが全力で走り出す。
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