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「それにしても、会社の方、落ち着きそうでよかったな」 亮介さんお手製の絶品ホットサンドを、亮介さんの口に運ぶという大役を終えて、ぐったりしていたところで、急にそんな話を振られた。 「俺、ハンドルから手離せないから、食べさせて」 さっきは、ちょっとからかうような口調だったのに、今度はねぎらうような、いつもの落ち着いたお兄ちゃん口調。 一緒にいる時間が増えていく中で、いろんな亮介さんの顔をみれていることが嬉しい。 世間的には“貴公子”然とした紳士的なイメージだけど、2人でいるときは、ちょっと子どもっぽい時があったり、ご機嫌に鼻歌歌ってるときがあったりもして、かわいらしい一面もあって、最近では、あんまり年の差も感じなくなってきている。 そんなことを考えていると 「あれ、まだそんな簡単には落ちつかないか」 何も返事しない私を気遣ってか、先ほどの話を1人で終わらせようとしてくれている。 「あ、すみません。そんなことないんです」 慌てて思考を元に戻した。 亮介さんの言う通り、当初想定していた最悪の事態は回避できたのだ。
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