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「正直、最初は、香港への出店の話をなんとかしたくて、それを鈴城建設につないでもらうっていうのが、見合いを受けた時の俺の目的だったんだ。
だけど、あの日、見合いで結衣に会って、結衣の目をみて、覚悟みたいなものを感じた瞬間、その一番の目的は変わったんだ。この子と結婚したいって。この子と添い遂げたいって、それが俺が結婚した目的になった」
思ってもみなかった、亮介さんの“結婚の目的”にびっくりして、「えっ」っと声が漏れてしまう。
「そうだよな。その反応だよな」
バツが悪そうな顔をする亮介さん。
「でも、それが本音。結婚式の時、誤解されて、まぁ、それまで結衣に堂々と話せるような行いをしてなかったから、自業自得と言われれば、それ以外のなにものでもないんだけど・・・。結衣が言うような“大事な人”でもなんでもなくって、あの時点では既に何の関係もなくなってたはずの人なんだ」
「じゃあ、そう言ってくれれば」
思わず、そう言葉が出てしまう。
あの時、そう言ってくれれば、ずっと感じていた罪悪感も、この切ない気持ちももたなくてすんだのに。そう思ってしまう。
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