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お知恵拝借
と、オーブンレンジの中を見てると香澄の声が聞こえてくる。
『もしもし、千夜くん。今、大丈夫?』
「大丈夫だから電話に出てるんだろうが。それより、珍しいな。こんな早い時間に掛けてくるなんてよ」
『薫子さんの話を聞いて、私も元の時代に戻るお手伝いをしたいと思って…』
「そうだが…俺もどうしたらいいかさっぱりわかんねー。…待てよ」
『千夜くん?』
「鈴木だったら何か良い方法が解るかもしれねー」
『そうね!鈴木くんに事情を話して協力してもらいましょうよ!』
香澄も乗り気だ。
俺は一旦、香澄に断りを入れ、電話を切ると、鈴木に直ぐ電話した。
『もしもし』『もしもしー!』
次の瞬間、耳をつんざく、喧しい声が聞こえてきた。
鈴木、山村と通話中だったのか。
山村とは、俺等より1年先輩の鈴木のお気に入りだ。
『千夜くんからこの時間に電話とは珍しいですね。何か有ったんですか?』
「ああ。にわかには信じられねーだろうから、鈴木、香澄に電話してグループ通話にしてくれ」
『解りました』『保ー、香澄ちゃんに何か有ったの?』
この際、山村の事はシカトする。
数回のコール音の後、香澄と偶然にも薫子の声が聞こえてきた。
『もしもし』『諸橋、これはカラクリ箱か?』
『はい、もしもし、こんにちは。グループ通話のお時間です。諸橋さん家には来客がいらっしゃる様ですね』
『薫子さん、それはテレビって言うのよ。鈴木くん、千夜くんからどこまで聞いたかわからないけど、今、薫子さんという女性が過去から来たの』
『過去から来た女性…?タイムスリップして来たんでしょうね。千夜くんはその薫子さん?をご存知だったんですか?』
やっぱ鈴木と話すと話が早くていい。
俺は今日遭ったことをなるべく事細かに鈴木と山村に伝えた。
『えっ!保、薫子ちゃんを香澄ちゃん家に連れてってあげたの?』
「ああ。薫子は男装してるとはいえ、女だかんな。俺の屋敷は男しか居ねーし」
『私も友達が出来たみたいで嬉しいわ』
鈴木はしばらく思案してた様だったが、やがて重い口を開く。
『元の時代に戻すのは難しいですが、薫子さんが秀忠さんと闘っている時に現世に来たと言う事は、秀忠さんが亡くなられていない限り、何処かにいるでしょうね』
マジか…。
鈴木の話は続く。
『薫子さんが元の時代に戻るには、2点。先ずは秀忠さんと決着をつけて、秀忠さんを元の時代に戻す事』
『秀忠さんを?薫子さんじゃなくて?』
『秀忠さんも薫子さんも元の時代に戻らないと僕達の未来が変わる恐れがありますので』
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