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「雲雀様!!」
耳元で聞こえた大きな声に私ははっとし、再び目を開いた。
どれほど気を失っていたのだろう。私は布団の上に寝かされていて、目の前には天井が見える。体は今まで以上に痛み、動かすこともままならなかった。首だけを動かし振り向くとそこには泣きながら私の顔を覗き込むタキ子さんの顔が見える。
そして奥には派手な朱色の着物の裾が見えた。
「ど、うして…」
かすれた声でそう呟き視線を上に上げると、立っていた金魚屋の男と目が合った。今更どうしてこの男がここにいるのだろう。
「お医者様に見てもらってもどこも悪いところが見つからないと言われて、その、勝手にお呼びしたんです」
タキ子さんは涙を拭うと金魚屋の着物の袖を引っ張った。そして頭を下げながら「お願いです。雲雀様をお救い下さい」と言って頭を下げた。
「雲雀様は本当に何も悪くないんです。何もしていないのに生まれてからずっと虐げられてきました。どうか、どうか命だけでも…」
金魚屋の男はただ黙ってタキ子さんを見下ろしていた。きっと本当にもう私は駄目なのだろう。
「呼ばれて来てみればまたお前か。もう足掻くな。生きようと足掻けば足掻くほど体の痛みは増すだけだ」
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