間章 慰霊祭

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 ♢♦♢     ストア庄は領地の西境にあり、先の戦争で人間の国家、イティージエンとの局地的な戦闘が多かった場所だ。いまでも人間との混血やハートレスが多く、タマリスや北部とはずいぶん様相が違う。  やや南に下ると、かつてタマリスへの旅程で野盗たちに襲われた場所も近い。あれはまだ王になる前のことで、デイミオンが駆け落ち者の男女を偽装したんだっけ。あそこではじめて〈呼ばい〉をおぼえ、そしてフィルが助けに来てくれた……。  飛竜(ピーウィ)に乗っての道すがら、リアナは思い出に(ひた)っていた。  庄内にはいると、あたりは祭りの準備に追われているようだった。広場の中央に立つポールは、白樺(シラカバ)とポプラで青々と飾られている。  昼過ぎに領主のあいさつが終わると、夜にかけてはダンスと食事となり、里人にとってはこちらのほうが本番らしい。つまり領主の訪問は前座のようなもので、「長話をせず短く切りあげるのが、好かれるコツだよ」と、出発前にリックが苦笑しつつ教えてくれた。
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