序章 権力者たちのピクニック

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 リアナが開いたのは「五公会」だが、実際にこの場にいた五公は代理を含む三人だけだった。王国随一の工業都市を抱える南の領主・エサルと、西部領主にして貴族たちの重鎮でもあるエンガス、それに北部領主ナイルの代理であるリアナだ。残りの二名は不在である。  もちろん理由はあった。ナイル・カールゼンデンは希少な白の竜騎手(ライダー)として、王国の農業を庇護する立場にある。つまるところ多忙で、五公のつとめは十全に果たされているとは言いがたかった。  グウィナ卿は、息子ナイメリオンが昨年起こした不祥事のため、一時的に五公としての権限を停止されている。現在は竜騎手団の団長として、王国の安全を預かる要職にある。  そして〈黄金賢者〉エピファニーといえば――彼は、五公会よりもさらに重要な仕事を任されていた。リアナにとって、という前書きがつくが。  王国の第一の竜(アルファメイル)、アーダルを目ざめさせるために、デイミオン王とともに竜舎に詰めているのだった。そのデイミオンは、遺物とも呼べるほど古い謎めいた設備のなかで長い眠りに就いている。リアナが、城を出てこのようなのんきな野掛け(ピクニック)に参加するのにまったく気が進まない、最大の理由だった。  夫が城で眠っているのなら、できるかぎりその場にいたい、というのが彼女の自然な気持ちだ。竜王デイミオンが冬眠に似た睡眠状態に入って、この春で一年になる。本来ならば、もう目ざめると考えられていた時期だ。  「兆候(ちょうこう)はあるよ」と、親友ファニーはリアナをなぐさめた。「アーダルは活性化しつつある、少なくとも数値の上では。そしてアーダルが復活すれば――デイミオン王も目を覚ます」  何度も説明され、理解しているつもりでも、リアナはじれったく不安な思いをぬぐい去ることができないでいる。
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